すてきな気持ち (1957年の曲)
「すてきな気持ち」(すてきなきもち)あるいは「アイ・フィール・プリティ」(“I Feel Pretty”)は、1957年のミュージカル『ウエスト・サイド物語』の楽曲のひとつ。
制作
『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、「ソンドハイム氏は ... 『ウエスト・サイド物語』のために書いた歌詞を特に気に入ったことはないと述べており、とりわけ「すてきな気持ち」については「この歌のアイデアは単純に過ぎる」と語ったという[1]。
オリジナルの舞台版のミュージカルにおける歌詞の一部は、映画版の『ウエスト・サイド物語』では場面設定の都合から変更が施された。オリジナルのI feel pretty and witty and bright / And I pity / Any girl who isn’t me tonight
が、I feel pretty, and witty and gay / And I pity / Any girl who isn’t me today
に変更されている。本来は夜という設定だったこの曲が歌われる場面が、映画では昼に変更されたため、bright
とtonight
で韻を踏んでいた箇所を、gay
とtoday
に変更したのである。
2019年のブロードウェイ・リバイバル上演版では、筋書きを単純化し、休憩が入らない90分のショーにまとめるために、この曲は省かれた。
物語の中での位置づけ
ミュージカル版では、この歌の場面の時点でマリアは、彼女の恋人であるトニーが兄ベルナルドを殺したばかりであることを知らずにいるが、映画版ではベルナルドの死の場面より前に、この歌の場面が置かれている。マリアは、働いているブライダル店で、自分は幸せで素敵な思いを感じている、なぜなら「とっても素晴らしい(pretty wonderful)男の子に愛されているから」と言い、同僚の女の子たちが彼女の馬鹿げた振る舞いをからかう。オールミュージックのロバート・カミングス(Robert Cummings) は、この曲について「バーステインの旋律の中でも記憶に残るもののひとつが盛り込まれ、冒頭の4つの音が、美味しそうにリズムに乗って上昇し、繰り返し、それが3つの音に減少し、さらに2つの音に減る ... バーンステインの楽器法は音楽を彩り、ラテン的な特徴も盛り込み、... 曲の半ばから入ってくる女の子たちのコーラスも華を添える。スティーヴン・ソンドハイムによる歌詞は、マリアの至福と新たに見つけた自信の感覚を巧みに捉えている。」と述べている[2]。
批評家の評価
『バーミンガム・メール』紙は、この歌を「楽しい(delightful)」と述べたが[3]、『ザ・タブ』紙は「古典的」と評した[4]。アプローズ・メーター(Applause Meter)は、「甘美なほど魅力的(sweetly charming)」としており[5]、VCOnStageは、「オペラ的」とした[6]。
カバー
この曲は、多数のアーティストたちによってカバーされており[7]、アニー・ロス(アルバム『アニー・ロスは歌う』)や、ジュリー・アンドリュースらもこの曲を取り上げている。リトル・リチャードは1996年のRCAビクターのトリビュート・アルバム『ウエスト・サイド物語(The Songs of West Side Story)』にこの曲を収録した[8]。
大衆文化の中で
- 2002年の映画『アナライズ・ユー』では、主人公ポール・ヴィッティ(ロバート・デ・ニーロ)が、気が触れたことを装う場面でこの歌を歌い出す[9]。
- 2003年の映画『N.Y.式ハッピー・セラピー』では、渋滞中の車内で、主人公デイヴ・バズニック(アダム・サンドラー)がセラピストのバディ・ライデル(ジャック・ニコルソン)に強いられ、この曲を歌う場面があり[10]、その後の展開の中でもこの曲が使用されている。
パロディ
- 子ども向けの番組『セサミストリート』の第3522回では、オスカー・ザ・グラウチのガールフレンドであるグランジェッタ(Grundgetta)が、グラウチ(Grouch:気難し屋)の美容師になるための学校に行く。それを説明するため、彼女は
I Feel Yucky
(I Feel Prettyのパロディ:「私は不愉快」といった意味)と歌い、自分がいかに不愉快かを述べ、「みんな」にも同じように不愉快になってほしいと願っていると歌う[11]。 - 『ザ・シンプソンズ』は、シーズン11エピソード3「グルメパパは3ツ星評論家!?」で、この歌のパロディを取り上げている。ホーマー は、The Springfield Shopper紙のレストラン評論の主任という完璧な副業を手に入れる。ホーマーはこれを、歌(Homer’s Food Song)を歌って祝う[12]。
- 1975年の『サタデー・ナイト・ライブ』のある回では、ゲスト・ホストだったマデリーン・カーンが『フランケンシュタインの花嫁』のパロディを演じてスラブから起き上がり、この曲を歌った。
- 『フレンズ』のエピソード「パパはキャスリーン・ターナー」では、キャスリーン・ターナーの演じるチャールズ・ビングが映画版の歌詞で
I feel pretty, and witty and gay
と歌う。 - 『ヴェジテールズ』シリーズの1995年の映画『ほんとうの友だちって?』では、この曲の替え歌で“I’m Busy”(「私は忙しい」の意)が、”Story of Flibber-o-loo”の中で歌われる。
脚注
- ^ “Same City, New Story”. The New York Times. (2009年3月29日) 2017年2月5日閲覧。
- ^ Cummings, Robert. "Leonard Bernstein: 'I Feel Pretty', song", Allmusic, accessed February 12, 2016
- ^ “Review: West Side Story at the New Alexandra Theatre, Birmingham - Roz Laws”. Birminghammail.co.uk (2014年4月3日). 2015年5月4日閲覧。
- ^ “Review: West Side Story”. Exeter.tab.co.uk (2014年2月3日). 2015年5月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月4日閲覧。
- ^ “West Side Story – Review”. Applause-meter.com. 2015年5月4日閲覧。
- ^ “Theater League's 'West Side Story' – A Revival of Rumbles and Romance”. Vconstage.com. 2015年5月4日閲覧。
- ^ "I Feel Pretty", SecondHandSongs.com, accessed February 12, 2016
- ^ "The Songs Of West Side Story", Amazon, accessed March 25, 2017
- ^ “Movies: Analyze That”. New York Mag/Vox Media, Inc.. 2020年2月16日閲覧。
- ^ “Jack Nicholson, Adam Sandler do death metal version of 'I Feel Pretty'”. USA Today (2015年8月15日). 2020年2月16日閲覧。
- ^ Sesame Street Episode 3522 street story
- ^ “Homer's Food Song” (英語). Wikisimpsons 2017年6月14日閲覧。
関連項目
- マーニ・ニクソン - 映画版でマリアを演じたナタリー・ウッドの歌唱シーンを吹き替えたゴーストシンガー
- アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング - 原題が同じくI Feel Prettyである2018年のコメディ映画
外部リンク
- "I Feel Pretty" lyrics at The Official West Side Story Site
- "I Feel Pretty", film version (1961)
- ウエストサイド物語-劇団四季-素敵な気持ち
- I Feel Pretty, song (from “West Side Story”) - オールミュージック
- I Feel Pretty - SecondHandSongs