アドボ
アドボ(スペイン語、タガログ語:Adobo)とは、マリネを意味する単語。また、フィリピンの肉や野菜の煮込み料理の名称でもある。酢が使われることが多く、常温での保存性を高めた料理法であるといえる。語源はスペイン語で「マリネする」または「漬ける」を意味する動詞アドバル(adobar)である。「マリネした」や「漬けた」を意味する過去分詞形はアドバード(男性形:adobado)またはアドバーダ(女性形:adobada)となる。
概要
スペインのアドボ
スペインでは、ニンニク、香辛料、酢、ハーブでマリネ液(アドボ)を作り、豚肉、イカ、魚を漬けてから蒸し煮や漬け焼き、フライにした料理を「○○・エン・アドボ」または「○○・アドバード(ダ)」(○○には素材名が入る)と呼ぶ。酢の代わりに白ワインを使うこともある。
アドボ料理はタパスあるいは主菜として供される。
フィリピンのアドボ
アドボはフィリピンの代表的な家庭料理で、フィリピン人の国民食である。もともとスペイン料理のアドバード(肉の漬け焼き)を起源としている。材料は骨付きの鶏(手羽)か豚(豚足)のいずれかを使うのが代表的で、鶏肉と豚肉を両方使うこともある。また、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、タケノコなどの野菜やエビ、ゆで卵を具に加えることもある。多量の酢を用いた漬け汁に肉を漬け込むために肉が柔らかくなり、保存性が高まる。レシピは各家庭や店によってまちまちだが、味付けにはニンニク、ソイソースであるトヨかパティス、砂糖、粒の黒胡椒、ローリエなどを使うのが一般的である。日本のカレーライスのように、具と汁をご飯と同じ皿に盛ってスプーンとフォークで食べる。
レシピのバリエーションは非常に豊富で、煮汁を飛ばして日本料理の照り焼きのようにする例もあれば、シチューのように汁を残したものもある。獣肉ではなくイカを用いることも多く、この場合はイカ墨で煮汁が黒くなる。また、唐辛子で辛味を加えたものや、ココナッツミルクで煮込んで汁が白濁したもの、多量のグリーンピースと一緒に煮て汁が緑色をしたもの、牛肉や魚肉を用いるもの、ベニノキの種子を加えて汁に赤色がついたもの、ナスやエンサイ、オクラ、サヤインゲンなど野菜だけを煮たものもあり、外見も風味もまったく違う料理だが、いずれもアドボの一種である。共通しているのは、中心となる具材を酢に漬けて煮ることである。
豚肉のアドボが余ったら、煮汁と一緒に炒飯にしたり、スライスして焼き、白飯と卵料理に添えて朝食に食べたり、食パンにはさんでホットサンドにすることもある。
メキシコとアメリカ合衆国のアドボ
メキシコ北部とアメリカ合衆国のニューメキシコ州には、カルネ・アドバーダという肉(主に豚肉)の漬け焼き料理がある。漬け汁(アドボ)に中辛の赤唐辛子のピュレを大量に用いるのが特徴であり、酢は少量しか用いない。
メキシコ料理では、チポトレもアドボに漬けてから利用されることが多い。アドボに漬けたチポトレの缶詰も市販されている。