コンテ

コンテ
ジョルジュ・スーラのコンテ画

コンテフランス語: Conté)とは、顔料粘土などのバインダーを混ぜた材料を、押し固めたり焼き固めて作られる、角形で棒状の画材である。人工チョークの一種[1][2][注 1]

元は発明者コンテの製品をいう。これとよく似たハードパステル類はコンテパステルとも呼ばれる[6]

コンテは、1795年画家であり化学者でもあったニコラ=ジャック・コンテフランス語版により発明された。当時、ナポレオン戦争フランスイギリスに海上封鎖を受けており、輸入が止まって鉛筆用のグラファイトが不足したため、それを有効利用できる方法として粘土とグラファイトの組み合わせを編み出した[7]

コンテも始めは鉛筆同様のグラファイト製のものであったが、やがて赤褐色サンギーヌ英語版)、茶色灰色のほか、その他様々な色相のものが作られるようになり、良品産出が稀になった伝統的な天然チョークに代わり使われるようになった[8][9]。現在では自然顔料酸化鉄カーボンブラック二酸化チタン)、粘土カオリナイト)、結合剤(セルロースエーテル)などから製造される[10]

コンテは素描スケッチクロッキーに用いられ、顔料が乗りやすい粗目のに使われることが多い。中間色となる着色紙に、黒、サンギーヌ、白の3色で描く技法も天然チョークの時代から使われ、トロワ・クレヨン英語版という。準備を施したキャンバスに、下描きとして使われることもある。柔らかいパステルで要求される大胆で絵画的な描法とは対比的に、コンテの正方形の硬い断面はハッチを入れた精細な制作に適している。

注釈

  1. ^ 「チョーク」とは元来は天然の白亜のことであり、これを棒状あるいは砲弾状に削って描画材料にしていた[3]。この白亜に顔料を加えたものや黒鉛片などを総称して描画用チョークという[3]。美術の分野では、古くは白亜や石鹸石英語版、炭質頁岩サンギーヌ英語版赤鉄鉱含有粘土)などの天然品[4][5]や、パステルやコンテといった人工品が使われてきた。なお、描画用チョークは学校教材などで用いられる炭酸カルシウム石膏を原料にするチョーク(白墨)とは厳密には区別される[3]

出典

  1. ^ The Complete Drawing & Painting Course. Sterling Publishing Company. (2003). p. 279. https://books.google.co.jp/books?id=t9h8MV6nWR4C&lpg=PP1&hl=ja&pg=PA279#v=onepage&q&f=false 
  2. ^ 八重樫春樹. “素描”. 日本大百科全書(ニッポニカ). 小学館. 2019年10月14日閲覧。
  3. ^ a b c 金子 亨、速水 敬一郎、西川 正恒、村辺 奈々恵、佐藤 みちる「素描に関する一考察─ リアリズム絵画を中心に ─」『東京学芸大学紀要. 芸術・スポーツ科学系』第64巻、東京学芸大学学術情報委員会、2012年10月31日、11-35頁。 
  4. ^ Thomas Buser. “Drawing Materials”. History of Drawing. 2019年10月14日閲覧。
  5. ^ Carlo James; Marjorie B. Cohn (1997). “Chalks and crayons”. Old Master Prints and Drawings: A Guide to Preservation and Conservation. Amsterdam University Press. pp. 68-72. https://books.google.co.jp/books?id=Udqbo8cL6CwC&lpg=PP1&hl=ja&pg=PA68#v=onepage&q&f=false 
  6. ^ 画材の救急箱 パステル”. 絵を描く.com. 全日本画材協議会. 2019年10月14日閲覧。
  7. ^ 100周年記念誌 資料抜粋 / 鉛筆と日本の鉛筆工業の歴史 / フランスの鉛筆(コンテによる発明、現在の鉛筆芯製法の基礎)”. 日本鉛筆工業協同組合ウェブサイト. 日本鉛筆工業協同組合 (2012年). 2019年10月14日閲覧。
  8. ^ Museum of Fine Arts, Boston 2016.
  9. ^ 金子ほか 2012.
  10. ^ カレ・コンテ(スケッチ)”. バニーコルアート. 2019年10月14日閲覧。

参考文献

関連項目

  • クレヨン - コンテ、鉛筆、クレヨン、パステルはいずれもフランス語ではcrayon。詳しくは項目を参照。