ハント型掃海艇

ハント型掃海艇
レドバリー(HMS Ledbury)
基本情報
艦種 掃海艇
就役期間 1979年 - 現在
前級 トン型掃海艇
次級 掃海用: リバー級
掃討用: サンダウン級
要目
排水量 基準:615トン
満載:725トン
全長 60メートル (200 ft)
最大幅 9.8メートル (32 ft)
吃水 2.2メートル (7.2 ft)
機関方式ネイピア・デルティック
 ディーゼルエンジン×2基
スクリュープロペラ×2軸
バウスラスター
出力 3,800馬力
速力 17ノット (31 km/h)
乗員 45人
兵装ボフォース 40mm機関砲×1門
 ※DS-30B 30mm機銃へ後日換装
Mk.44 7.62mm多銃身機銃×2門
 ※後日装備
7.62mm汎用機銃×3挺
搭載艇処分艇×2隻
C4ISTAR NAUTIS-3掃海艇情報処理装置
レーダー 1006型 対水上捜索用
ソナー ASDIC 193M型 機雷探知機
特殊装備PAP-104 Mk.3機雷処分具
・Mk.8係維掃海具
・Mk.11磁気掃海具
・TA.6音響掃海具
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ハント型掃海艇英語: Hunt class minehunter)は、イギリス海軍が運用する掃海艇・機雷掃討艇の艦級。また退役艇がギリシャ海軍リトアニア海軍において再就役している。

来歴

第2次大戦まで、機雷とはすなわち触発式の係維機雷であり、これに対する掃海艇は、艦隊の前路掃海を主任務として比較的高速・重装備の鋼製の艇が主流であった。しかし大戦後期に磁気・音響による感応機雷が出現し、続く朝鮮戦争での対機雷戦の経験は、沈底式感応機雷の脅威を関係各国に認識させることとなった[1]。これに対応して、まず触雷を避けるため、1950年代以降、掃海艇の建材は非磁性化が求められるようになった。また特に感応機雷発火装置の高知能化・目標追尾機雷の出現は、従来の曳航式後方掃海における触雷のリスク・掃海の不確実さを増大させることになり、爆発物処理の手法により機雷を一個一個確実に無力化していくという、機雷掃討に注目が集まった[2]

これらの要請に応じて、イギリス海軍は1953年よりトン型掃海艇の運用を開始した。これはアル骨木皮(アルミニウム合金製の骨材と木製の外板)構造とすることで非磁性化するとともに、二周波数に対応した新型のASDIC 193型機雷探知機を搭載することで、初めて実用的な機雷掃討能力を備えたものであり、本級で開発された手法はドイツ海軍や海上自衛隊(たかみ型掃海艇)などにも輸出された[3][4]

しかし同級においては、機雷掃討は水中処分員に依存しておりリスクが高かったほか、アル骨木皮では非磁性化も不徹底であることが指摘されていた。このことから、その代替を検討する時期においては、新しい非磁性素材と機雷掃討手段の刷新が求められた。まず新しい非磁性素材として繊維強化プラスチック(FRP)が注目されるようになり、1972年には、世界初のFRP掃海艇としてトン型の設計を元にした掃討艇として「ウィルトン英語版」を進水させた。そして同艇の実績を踏まえて、装備面でも刷新した掃海・掃討両用艇として開発されたのが本級である[5]

設計

上記の通り、本級の設計の大きな特徴が、建材としてガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を採用していることにある。これは、トン型で採用されていたアル骨木皮構造よりも非磁性化において優れるとともに、英連邦諸国を含む熱帯海域での木造艇維持の困難さをも克服するための措置であった。ただし、外板をガラス・ロービングクロスのみで積層していることから、薄く軽量で耐燃焼性には優れる一方、耐衝撃性には問題があるとされている。また、FRP成形と艇の建造を並行して行うのではなく、肋骨と外板を別々に成形したのちにボルト留めで固定しているために、工数や重量の増加が生じている。これは基本的には木造艇の手法をそのままFRPに適用したものであり、過渡的な手法といえる[5]

主機としては、トン型と同系列のネイピア・デルティック9-59 2ストローク9気筒高速ディーゼルエンジンを装備する。また電気系統としては、主発電機としてFoden FD 12 Mk.7(200kW)×3基、掃海発電機としてデルティック9-55B(525kW)を搭載する[6]。FRP艇は単板外板の構造上、音が響きやすいことから、これらの機関・発電機は外板から浮かせたラフト上に設置されている[5]

装備

C4ISR

掃海艇情報処理装置としてはCAAIS DBA-4が搭載されたが、のちにNAUTIS-3に更新された[7]

機雷探知機としては、「ウィルトン」と同じくASDIC 193M型が搭載された。これはトン型で採用された革新的な193型の改良型であり、機雷探知用に100キロヘルツ、類別用に300キロヘルツを使用するなどの主要諸元はおおむね同一であるが、回路のソリッドステート化によって信頼性を向上させるとともに軽量化し、またコンピュータ化による信号処理やビーム形成能力の向上によって、最大探知距離を600ヤード (550 m)に延伸した[3]。また対水上レーダーとしては、Xバンドの1006型が搭載されている[7]

機雷掃討・掃海具

機雷処分具として、フランス製のPAP-104 Mk.3が採用された。フランス海軍が1972年より運用を開始したシルセ級機雷掃討艇フランス語版において装備化されたものの輸出型であり、イギリス海軍においてはRCMDS(remote-controlled mine-disposal system) Mk.1として制式化されている。後には中深度対応のPAP-104 Mk.5(RCMDS Mk.2)に更新された[7]が、2006年以降、ワンショット型の自走式機雷処分用弾薬(EMD)であるシーフォックスに換装されている[8]

また掃海具としては、オロペサ型のMk.8係維掃海具、Mk.11磁気掃海具、TA.6音響掃海具が搭載されている[6]

配備

本級は比較的大型の掃海・掃討両用艇であり、またFRP艇としては過渡期の設計を採用していたこともあって、建造費は3,000万ポンド(約100億円)に高騰してしまった。このため、当初は24隻の建造が予定されていたものの、最終的な建造数は13隻にとどまった。これを受けて、本級を補完するため、深深度海域での係維掃海能力に特化した鋼製艇と、掃海能力を省いたFRP製の掃討専用艇(Single Role Minehunter; SRMH)の組み合わせが計画され、前者はリバー級掃海艇として1984年から、後者はサンダウン級機雷掃討艇として1989年から、それぞれ配備された[9]

同型艇一覧
 イギリス海軍 退役/再就役後
# 艦名 進水 就役 退役 再就役先 # 艦名 再就役
M29 ブレコン
HMS Brecon
1978年 1979年12月18日 2005年7月19日
M30 レドバリー
HMS Ledbury
1979年12月 1981年6月11日 イギリス海軍にて就役中
M31 キャティストック
HMS Cattistock
1981年1月22日 1982年3月5日
M32 コッテスモア
HMS Cottesmore
1982年2月9日 1983年6月24日 2005年  リトアニア海軍 M53 スカルヴィス
Skalvis
2011年
M33 ブロックレスビー
HMS Brocklesby
1982年1月12日 1983年2月3日 イギリス海軍にて就役中
M34 ミドルトン
HMS Middleton
1983年4月27日 1984年7月4日
M35 ダルヴァートン
HMS Dulverton
1982年 1983年 2004年  リトアニア海軍 M54 ケオルシス
Kuršis
2011年
M36 ビスター
HMS Bicester
1985年6月4日 1988年 2000年  ギリシャ海軍 M62 エウローペー
Ευρώπη
2001年
M37 チディングフォールド
HMS Chiddingfold
1983年10月 1984年10月 イギリス海軍にて就役中
M38 アサーストン
HMS Atherstone
1986年3月1日 1987年1月17日
M39 ハーワース
HMS Hurworth
1984年9月25日 1985年7月2日
M40 バークリー
HMS Berkeley
1986年 1986年 2000年  ギリシャ海軍 M63 カリストー
Καλλιστώ
2001年
M41 クォーン
HMS Quorn
1988年1月23日 1989年 イギリス海軍にて就役中

出典

  1. ^ 井川宏「掃海艦艇の特質と種類 (掃海艦艇のメカニズム)」『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、69-73頁。 
  2. ^ 「船体 (現代の掃海艦艇を解剖する)」『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、76-79頁。 
  3. ^ a b 黒川武彦「センサー (現代の掃海艦艇を解剖する)」『世界の艦船』第427号、海人社、1990年10月、88-91頁。 
  4. ^ 赤尾利雄「機雷と対機雷戦 (今日の対機雷戦)」『世界の艦船』第307号、海人社、1982年5月、61-6頁。 
  5. ^ a b c 「各国の新型掃海艇総覧」『世界の艦船』第307号、海人社、1982年5月、68-76頁。 
  6. ^ a b Eric Wertheim (2007). Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World: Their Ships, Aircraft, and Systems. Naval Institute Press. ISBN 9781591149552. https://books.google.co.jp/books?id=TJunjRvplU4C 
  7. ^ a b c Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629. https://books.google.co.jp/books?id=4S3h8j_NEmkC 
  8. ^ SPG Media Limited (2012年). “SeaFox Mine Disposal Unmanned Underwater Vehicle (UUV), Germany” (英語). 2014年2月8日閲覧。
  9. ^ 「各国新型掃海艇のプロフィール (新しい掃海艇)」『世界の艦船』第351号、海人社、1985年6月、76-83頁。 

関連項目