ピアノソナタ第15番 (シューベルト)
ピアノソナタ第15番 ハ長調 D 840 はフランツ・シューベルトが作曲した未完のピアノソナタ。一般に『レリーク』(Reliquie)の愛称で呼ばれ、未完のピアノソナタでありながら重要作とされている。
概要
本作は1825年の4月に作曲されたが、シューベルトの生前には出版されず、死後から11年が経った1839年にロベルト・シューマンにより発見された。
エルンスト・クルシェネク(1921年)、パウル・バドゥラ=スコダ(ヘンレ版、1976年/1997年改訂)、マルティーノ・ティリモ(ウィーン原典版…音楽の友社より出版されている)、ジョルジュ・プリュデルマシェール、ブライアン・ニューボールド、ウィリアム・ボルコム、マイケル・フィニスィー[1](不協和音を伴うオリジナルのフレーズが多く、事実上フィニスィーのオリジナル作品的な性格が強い)などによる補筆版がある。
本作はシューベルトの未完成のピアノソナタとしては最後の作品となり、次作『第16番 イ短調』(作品42, D 845)以降は全て完成された作品が発表されるようになる。
未完の作品という性格上、演奏の機会は少なく、録音でも第2楽章までが多い。ただし、スヴャトスラフ・リヒテルは、未完の第3・4楽章まで補筆無しで録音している。
愛称の由来
愛称である『レリーク』(Reliquie)は「遺作」や「文化遺品」といった意味だが、これは出版に当たって、本作がシューベルトのピアノソナタとして最後の作品だと誤認された結果命名されたものである。実際、出版されたのは死後の1861年で、作曲者の評価も一定していた。だが、出版後にシューマンから自筆譜を贈られたアドルフ・ベットガーは楽譜をバラバラにしてしまい、第2楽章冒頭と第4楽章の全てが現在では行方不明となっている。
曲の構成
全4楽章。完成されているのは第1楽章と第2楽章のみだが、それでも演奏時間は約25分になる(外部リンクのCrossland補筆版は40分)。
- 第1楽章 モデラート
- 第2楽章 アンダンテ
- 第3楽章 (未完成) メヌエット - トリオ
- 変イ長調 - 嬰ト短調、4分の3拍子。
- この楽章以降は未完で、作曲者もなぜか楽譜をぞんざいに扱った形跡がある。校訂・補注をつけたハワード・ファーガソンはその態度を惜しんでいる。最初に補筆したクルシェネクは、主部で変イ長調からイ長調へ転調した後にシューベルトが続きを書けなくなったため未完になった、と推測している。
- スケルツォ風の曲。下降音階を主題にした優雅な主題で始まるが、急に同音連打になったり遠隔調のイ長調に転調するなどロマン派的な作品になっている。中間部は嬰ト短調で、3声の書法が中心だが途中で強弱のコントラストが付けられる。主部はイ長調に転調したまま80小節目の1拍目で未完となっており、作曲者による "etc. etc." (「など、など」)という書き込みが残されている。なお、中間部(29小節)は完成されている。多くの補筆版では主部に戻ったのち短いコーダが付けられている。
- 第4楽章 (未完成) アレグロ
脚注
- ^ “Schubert - Finnissy - Widmann”. www.oehmsclassics.de. 2019年10月15日閲覧。