世界選手権自転車競技大会ロードレース

世界選手権自転車競技大会ロードレース（せかいせんしゅけんじてんしゃきょうぎたいかい ろーどれーす 英: UCI Road World Championships）は、例年9月下旬ないし10月初旬に行われる世界選手権自転車競技大会のロードレース部門の大会である。「UCIロード世界選手権大会」とも呼ばれる。

ウィキメディア・コモンズには、世界選手権自転車競技大会ロードレースとマイヨ・アルカンシエルに関連するメディアがあります。

一般のロードレース大会の参加チームはUCIに登録された各チームによって行われているが、当大会では国別のナショナルチームで争われる。また、いずれの種目も1日で勝負を決するワンデイレースとなっている。優勝者には金メダルとともに、マイヨ・アルカンシエルと称するジャージが贈呈される。

また、開催地は各年各国持ち回りとなっている。

1921年に、男子アマチュア（アマ）の個人ロードレース1種目だけの開催で開始され、1927年より男子プロ・個人ロードレースが新たに加わった。さらに1958年から女子個人ロードレースが、1962年から男子アマ・チームタイムトライアル（略称：TTT）が、1987年から女子TTTがそれぞれ追加されることになった。

しかし、1992年のバルセロナオリンピックを最後にオリンピックでのTTTが廃止され、当大会においても、1994年限りで男女それぞれのTTTが廃止されることになった。一方、1994年より当大会で、男女の個人タイムトライアル（略称：ITT）が実施され、後に1996年のアトランタオリンピックでも、男女のITTが採用されることになった。

さらにアトランタオリンピックより、プロとアマの垣根を撤廃し、オープン化することになったことを受け、1995年限りで男子アマ・個人ロードレースを廃止。そして1996年からは、前年に廃止された男子アマ・個人ロードレースに代わり、男子23歳未満（略称U23）・個人ロードレースが、U23・ITTとともに行われるようになった。

ジュニア世界選手権自転車競技大会（ジュニア世界選）が1975年に開始され、当初はロードレースとトラックレースを同一開催期間中に行なっていたが、1997年より分離され、当大会でジュニア部門を実施することになった。しかし2005年以降、再びジュニア世界選に包括された後、2011年より再び分離し、当大会でジュニア部門を実施することになった。

2012年からは、UCIに登録された各チームによる男女のTTTが追加されたが、2018年をもって廃止された。なお、この競技に優勝したチームの選手にはマイヨ・アルカンシエルは贈呈されなかった。これに代わり2019年から国別対抗で行われる、男女混合TTTリレーが追加された。

現在は開催時期が異なるが、1995年まで、一部の年を除き、同一国で世界選手権自転車競技大会トラックレースと同一時期に包括開催が行われていた。また、2023年には13種目^[1]を同一地域で同一時期の包括開催を実施した。UCIは今後、4年に一度この包括した世界選手権大会を行う方針を示している^[2]。

レースは周回コースを基本としていることが多く、女子や男子のU23（23歳以下）のレースも周回数が違うだけで同じコースを使用する。また国別対抗戦であるということもこの大会の特徴であり、普段はライバルとして走っている選手がチームメイトになるため、通常では見られないようなメンバーで走行するシーンでレースは進行される。

選手たちはナショナルジャージに身を包み、己のプライドと国の威信をかけて世界最高峰のワンデーレースを走る為、普段ワンデーレースに出走しない選手が出場したり、クラシックレースで見られないレース内容で展開されるケースもある。

ショーン・ケリーやロジェ・デフラミンクといった「クラシックスペシャリスト」と呼ばれた名選手でも個人ロードレースを制覇することができなかった例もあり^[3]、ツール・ド・フランス史上初の5回の総合優勝を果たしたジャック・アンクティルは、個人ロードレースに加え、トラックレースの個人追抜でも最高の成績は2位どまりであり、一度もアルカンシエルを袖に通すことができなかった。

歴代の優勝者にはロードレース史に名を残す選手が並んでいる。

個人タイムトライアルは1994年に新設された。コースレイアウトは概ねツール・ド・フランスなどにおけるタイムトライアルステージと似た設定が多く、この種目を得意とする選手が実績を上げている。

個人ロードレースで3回の優勝（歴代最多）

名前	国	優勝年度
アルフレッド・ビンダ	イタリア	1927年、1930年、1932年
リック・バンステーンベルヘン	ベルギー	1949年、1956年、1957年
エディ・メルクス	ベルギー	1967年、1971年、1974年
オスカル・フレイレ	スペイン	1999年、2001年、2004年
ペーター・サガン	スロバキア	2015年、2016年、2017年

※メルクスはアマチュア種目でも1964年に優勝している。

個人ロードレースで2連覇以上

名前	国	連覇数	優勝年度
ペーター・サガン	スロバキア	3	2015年～2017年
ジョルジュ・ロンセ	ベルギー	2	1928年～1929年
リック・バンステーンベルヘン	ベルギー	2	1956年～1957年
リック・ファン・ローイ	ベルギー	2	1960年～1961年
ジャンニ・ブーニョ	イタリア	2	1991年～1992年
パオロ・ベッティーニ	イタリア	2	2006年～2007年
ジュリアン・アラフィリップ	フランス	2	2020年～2021年

個人ロードレースで“トリプルクラウン（三冠王）”を達成^[4]

名前	国	優勝年度
エディ・メルクス	ベルギー	1974年
ステファン・ロッシュ	アイルランド	1987年

個人ロードレースと個人タイムトライアルの両種目で優勝

名前	国	優勝年度
		個人ロードレース	個人タイムトライアル
アブラハム・オラーノ	スペイン	1995年	1998年
レムコ・エヴェネプール	ベルギー	2022年	2023年

個人タイムトライアルで2回以上の優勝

名前	国	優勝回数	優勝年度
ファビアン・カンチェラーラ	スイス	4	2006年～2007年、2009年～2010年
トニー・マルティン	ドイツ	4	2011年～2013年、2016年
マイケル・ロジャース	オーストラリア	3	2003年～2005年
ヤン・ウルリッヒ	ドイツ	2	1999年、2001年
ロハン・デニス	オーストラリア	2	2018年～2019年
フィリッポ・ガンナ	イタリア	2	2020年～2021年

当大会における、日本人選手の最高順位は、男子は当大会初参加となった1936年、出宮順一がアマ・ロードレースで記録した7位である。プロ・ロードレース（現・エリート・ロードレース）部門に初出場したのは1973年の加藤善行（競輪選手）であるが、途中棄権に終わった。1987年に日本人初のプロロード選手である市川雅敏^[5]が43位に入って初完走を記録したものの、以後も完走が精一杯という状況が続いていた^[6][7]が、2010年の男子エリートでは、新城幸也が9位に入り、プロロードレース時代を含め、同種目史上初の一桁着順を記録した。女子は2014年大会における與那嶺恵理の22位が最高である。

• UCIのページ（英語）

表 話 編 歴 世界選手権自転車競技大会
ロードレース トラックレース マウンテンバイク バイクマラソン BMX シクロクロス インドア パラサイクリング
マイヨ・アルカンシエル

表 話 編 歴 世界自転車選手権男子エリート個人ロードレース優勝者
1927年    アルフレッド・ビンダ 1928年    ジョルジュ・ロンス 1929年    ジョルジュ・ロンス 1930年    アルフレッド・ビンダ 1931年    レアルコ・グエッラ 1932年    アルフレッド・ビンダ 1933年    ジョルジュ・スペシェ 1934年    カレル・カールス 1935年    ジャン・アールツ 1936年    アントナン・マーニュ 1937年    エロワ・ムランベール 1938年    マルセル・キント 1939年  未開催 1940年  未開催 1941年  未開催 1942年  未開催 1943年  未開催 1944年  未開催 1945年  未開催 1946年    ハンス・クネヒト 1947年    テオ・ミデルカンプ 1948年    アルベリック・スホット 1949年    リック・バンステーンベルヘン 1950年    アルベリック・スホット 1951年    フェルディナント・キュプラー 1952年    ハインツ・ミュラー 1953年    ファウスト・コッピ 1954年    ルイゾン・ボベ 1955年    スタン・オケルス 1956年    リック・バンステーンベルヘン 1957年    リック・バンステーンベルヘン 1958年    エルコーレ・バルディーニ 1959年    アンドレ・ダリガード 1960年    リック・ファン・ローイ 1961年    リック・ファン・ローイ 1962年    ジャン・スタブリンスキ 1963年    ブノニ・ブエイ 1964年    ヤン・ヤンセン 1965年    トム・シンプソン 1966年    ルディ・アルティヒ 1967年    エディ・メルクス 1968年    ヴィットリオ・アドルニ 1969年    ハーム・オッテンブロス 1970年    ジャンピエール・モンセレ 1971年    エディ・メルクス 1972年    マリーノ・バッソ 1973年    フェリーチェ・ジモンディ 1974年    エディ・メルクス 1975年    ハニー・クイパー 1976年    フレディ・マルテンス 1977年    フランチェスコ・モゼール 1978年    ヘリー・クネットマン 1979年    ヤン・ラース 1980年    ベルナール・イノー 1981年    フレディ・マルテンス 1982年    ジュゼッペ・サローニ 1983年    グレッグ・レモン 1984年    クロード・クリケリオン 1985年    ヨープ・ズートメルク 1986年    モレノ・アルゼンティン 1987年    ステファン・ロシュ 1988年    マウリツィオ・フォンドリエスト 1989年    グレッグ・レモン 1990年    ルディー・ダーネンス 1991年    ジャンニ・ブーニョ 1992年    ジャンニ・ブーニョ 1993年    ランス・アームストロング 1994年    リュク・ルブラン 1995年    アブラハム・オラーノ 1996年    ヨハン・ムセウ 1997年    ローラン・ブロシャール 1998年    オスカル・カーメンツィント 1999年    オスカル・フレイレ 2000年    ロマーンス・ヴァインシュタインス 2001年    オスカル・フレイレ 2002年    マリオ・チポリーニ 2003年    イゴル・アスタルロア 2004年    オスカル・フレイレ 2005年    トム・ボーネン 2006年    パオロ・ベッティーニ 2007年    パオロ・ベッティーニ 2008年    アレッサンドロ・バッラン 2009年    カデル・エヴァンス 2010年    トル・フースホフト 2011年    マーク・カヴェンディッシュ 2012年    フィリップ・ジルベール 2013年    ルイ・コスタ 2014年    ミハウ・クフャトコフスキ 2015年    ペーター・サガン 2016年    ペーター・サガン 2017年    ペーター・サガン 2018年    アレハンドロ・バルベルデ 2019年    マス・ピーダスン 2020年    ジュリアン・アラフィリップ 2021年    ジュリアン・アラフィリップ 2022年    レムコ・エヴェネプール 2023年    マチュー・ファン・デル・プール

表 話 編 歴 世界自転車選手権男子エリート個人タイムトライアル優勝者
1994年    クリス・ボードマン 1995年    ミゲル・インドゥライン 1996年    アレックス・ツェーレ 1997年    ローラン・ジャラベール 1998年    アブラハム・オラーノ 1999年    ヤン・ウルリッヒ 2000年    セルヒーイ・ゴンチャール 2001年    ヤン・ウルリッヒ 2002年    サンティアゴ・ボテロ 2003年    マイケル・ロジャース 2004年    マイケル・ロジャース 2005年    マイケル・ロジャース 2006年    ファビアン・カンチェラーラ 2007年    ファビアン・カンチェラーラ 2008年    ベルト・グラプシュ 2009年    ファビアン・カンチェラーラ 2010年    ファビアン・カンチェラーラ 2011年    トニー・マルティン 2012年    トニー・マルティン 2013年    トニー・マルティン 2014年    ブラッドリー・ウィギンス 2015年    ヴァシル・キリエンカ 2016年    トニー・マルティン 2017年    トム・デュムラン 2018年    ロハン・デニス 2019年    ロハン・デニス 2020年    フィリッポ・ガンナ 2021年    フィリッポ・ガンナ 2022年    トビアス・フォス（英語版） 2023年    レムコ・エヴェネプール