外交団

外交団英語: Diplomatic Corpsフランス語: Corps diplomatique)とは、特定の接受国に常駐する複数国の外交使節団から構成される総体である。あくまでも儀礼的な集団であり、各国使節団の独立性を掣肘する権限は持ち合わせておらず、国際法で定められた特別の資格や職務もない[1]

この集団の長は、外交団長英語: Dean of the Diplomatic Corpsフランス語: Doyen du corps diplomatique)と呼ばれる。20世紀以降は、信任状を捧呈した日時が最も早い特命全権大使高等弁務官またはローマ教皇庁大使(英語: Apostolic Nuncio)、あるいは信任状捧呈の日時に関わらずローマ教皇庁大使が団長を務めることが通例となっている[2]

歴史的には、必ずしも大使、高等弁務官、ローマ教皇庁大使が外交団長であるとは限らない。一例を挙げると、アルベール・ダネタンフランス語版駐日ベルギー公使1904年から駐日外交団長を務めていたという例がある[3]

東南アジア諸国連合(ASEAN)については、外交団ではなくASEAN委員会英語: ASEAN Committee)が各国の首都や国際機関所在地に設置されている[4]

駐日外交団

日本に常駐する外交団は、駐日外交団英語: Diplomatic Corps in Japanフランス語: Corps diplomatique au Japon)あるいは在京外交団英語: Diplomatic Corps in Tokyoフランス語: Corps diplomatique à Tokyo)と呼ばれる[5][6]。この集団の長は、駐日外交団長英語: Dean of the Diplomatic Corps in Japanフランス語: Doyen du corps diplomatique au Japon)あるいは在京外交団長英語: Dean of the Diplomatic Corps in Tokyoフランス語: Doyen du corps diplomatique à Tokyo)と呼ばれる。

日露戦争終結後の1905年11月1日、クロード・マクドナルド駐日英国公使が昇格する形で史上初の駐日大使に就任し、他国の派遣する公使を差し置いて外交序列筆頭の駐日外交団長となった。これが、駐日外交団長を特命全権大使が務める初めての例である[7]。爾後、信任状を捧呈した日時が最も早い大使が駐日外交団長を務めることが通例となっている。

また、通常の駐日外交団とは別個に、駐日アラブ外交団英語: Arab Diplomatic Corps in Japanフランス語: Corps diplomatique arabe au Japon)あるいは在京アラブ外交団英語: Arab Diplomatic Corps in Tokyoフランス語: Corps diplomatique arabe à Tokyo[8][9]、および駐日アフリカ外交団英語: African Diplomatic Corps in Japanフランス語: Corps diplomatique africain au Japon)あるいは在京アフリカ外交団英語: African Diplomatic Corps in Tokyoフランス語: Corps diplomatique africain à Tokyo)も存在する[10][11]

東南アジア諸国連合(ASEAN)については、外交団ではなくASEAN東京委員会英語: ASEAN Committee in Tokyo、略称: ACT)が設置されている[4]

歴代の駐日外交団長

階級 派遣国 氏名(日本語) 氏名(英語) 氏名(現地語) 着任 離任 備考
総領事 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 タウンゼント・ハリス Townsend Harris Townsend Harris 1856年 1859年 史上初の駐日総領事。オールコック英公使の着任後も、米弁理公使として引き続き日本に駐在
全権公使 イギリスの旗 イギリス ラザフォード・オールコック Rutherford Alcock Rutherford Alcock 1859年 1865年 史上初の駐日公使
全権公使 フランスの旗 フランス帝国 レオン・ロッシュ Léon Roches Léon Roches 1865年 1868年
全権公使 イギリスの旗 イギリス ハリー・スミス・パークス Harry Smith Parkes Harry Smith Parkes 1868年 1883年
全権公使 フランスの旗 フランス ジョゼフ・アダム・シェンキェヴィッチフランス語版 Joseph Adam Sienkiewicz Joseph Adam Sienkiewicz 1894年 1886年末(1887年1月版の外交団リスト掲載)時点で外交団長
全権公使 ベルギーの旗 ベルギー アルベール・ダネタンフランス語版 Albert d'Anethan Albert d'Anethan 1904年 1905年 マクドナルド英大使の着任後も、ベルギー公使として引き続き日本に駐在
全権大使 イギリスの旗 イギリス クロード・マックスウェル・マクドナルド Claude Maxwell MacDonald Claude Maxwell MacDonald 1905年 1912年 史上初の駐日大使
全権大使 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ロバート・ダニエル・マーフィー Robert Daniel Murphy Robert Daniel Murphy 1952年 1953年
全権大使 コートジボワールの旗 コートジボワール ピエール・ネルソン・コフィ Pierre Nelson Coffi Pierre Nelson Coffi 1991年 遅くとも1976年の時点で外交団長
全権大使 ジブチの旗 ジブチ ラシャッド・アーメッド・サレ・ファラ英語版 Rachad Ahmed Saleh Farah رشاد احمد صالح فرح 2004年 [12]
全権大使 エルサルバドルの旗 エルサルバドル ホセ・リカルド・パレデス・オソリオ Jose Ricardo Paredes Osorio José Ricardo Paredes Osorio 雑誌『正論 2010年2月号』(2009年12月25日発売)の掲載時点で外交団長
全権大使 サンマリノの旗 サンマリノ マンリオ・カデロ Manlio Cadelo Manlio Cadelo 2011年 (現職)

歴代の駐日アラブ外交団長

階級 派遣国 氏名(日本語) 氏名(英語) 氏名(現地語) 着任 離任 備考
全権大使 ジブチの旗 ジブチ ラシャッド・アーメッド・サレ・ファラ英語版 Rachad Ahmed Saleh Farah رشاد احمد صالح فرح 2004年 [12]
全権大使 カタールの旗 カタール リヤード・アリー・アル=アンサーリー Riad Ali Al-Ansari رياض علي الأنصاري 2009年
常駐総代表 パレスチナの旗 パレスチナ ワリード・アリ・シアム Waleed Ali Siam وليد علي صيام 2009年 (現職) 大使級。アラブ諸国はパレスチナの常駐総代表を大使と同格であると認めている

歴代の駐日アフリカ外交団長

階級 派遣国 氏名(日本語) 氏名(英語) 氏名(現地語) 着任 離任 備考
全権大使 コートジボワールの旗 コートジボワール ピエール・ネルソン・コフィ Pierre Nelson Coffi Pierre Nelson Coffi 1991年 遅くとも1976年の時点で外交団長
全権大使 ジブチの旗 ジブチ ラシャッド・アーメッド・サレ・ファラ英語版 Rachad Ahmed Saleh Farah رشاد احمد صالح فرح 2004年 [12]
全権大使 チュニジアの旗 チュニジア サラーフ・ハンナーシー(サラ・ハンナシ) Salah Hannachi صلاح حناشي 2007年 [13][14]
全権大使 タンザニアの旗 タンザニア エリー・エリクンダ・エリネーマ・ムタンゴ Elly Elikunda Elineema Mtango Elly Elikunda Elineema Mtango 2008年2月13日時点でアフリカ外交団長[15][16]
全権大使  コンゴ民主共和国 マルセル・ムルンバ・チディンバ Marcel Mulumba Tshidimba Marcel Mulumba Tshidimba 2011年
全権大使 ジンバブエの旗 ジンバブエ スチュアート・ハロルド・コンバーバッハ英語版 Stuart Harold Comberbach Stuart Harold Comberbach 2014年
全権大使 エリトリアの旗 エリトリア エスティファノス・アフォワキ・ハイレ Estifanos Afeworki Haile 2014年 (現職)

出典

  1. ^ 外交団(がいこうだん)とは - コトバンク
  2. ^ 中野文庫 - 外交官席次
  3. ^ 在ベルギー日本国大使館 - 大使のよもやま話
  4. ^ a b 林外務大臣とASEAN東京委員会(ACT)との会談 | 外務省
  5. ^ 駐日各国外交団の群馬県視察ツアー | 外務省
  6. ^ 在京外交団を対象とした福島県いわき市スタディーツアー(「常磐共同火力株式会社勿来(なこそ)発電所」等の視察)(結果) | 外務省
  7. ^ 『筑波学院大学紀要 第12集』pp.125-141 所収の川崎晴朗による論文「東京にあった外交団 1887年-1911年(2)」(筑波学院大学、2017年)、p.138
  8. ^ 外務省: 駐日アラブ外交団による高橋外務副大臣表敬(駐日アラブ外交団からの寄付金受け入れ)
  9. ^ 在京アラブ外交団による岸田外務大臣表敬 | 外務省
  10. ^ 岸外務副大臣の駐日アフリカ外交団向け2025年大阪万博レセプション出席 | 外務省
  11. ^ 外務省: 在京アフリカ外交団代表による岸田外務大臣表敬
  12. ^ a b c 庭野会長、日本ムスリム協会創立50周年記念祝賀会に出席 | 立正佼成会ニュース
  13. ^ 小泉総理の動き-在京アフリカ外交団の表敬-
  14. ^ ご引見(平成19年) - 宮内庁
  15. ^ 外務省: 鶴田真由氏へのTICADⅣ親善大使委嘱状交付式について
  16. ^ 特集 企業連携 経済成長を支える新しいパートナーシップ | 広報誌・パンフレット | JICAについて - JICA

関連項目