抑速ブレーキ

生駒山を横断する為、抑速ブレーキを搭載した近鉄7020系電車

抑速ブレーキ(よくそくブレーキ)とは、列車車両を完全に止める「停止ブレーキ」に対し、速度を一定以下に抑えるためのブレーキのことをいい、文献によっては「勾配抑速ブレーキ」のことをいう。

概要

下り坂でブレーキを連続使用した場合、車輪ディスクを物理的に押さえる「摩擦ブレーキ」では。摩擦による熱が蓄積してフェード現象によるブレーキ力低下が発生したり、ベーパーロック現象でブレーキが全く効かなくなったりする。また、制動力の強さの関係でブレーキの締め・緩めが繰り返し発生することで、乗り心地悪化や所要時間増加などの悪影響を与える[1]ため、「非摩擦ブレーキシステム」を使用する。

「ブレーキ」と名がつくが、操作はブレーキハンドルではなくマスコンハンドルで行う。例えば大阪市交通局30系の場合、マスコンハンドルを切位置から加速とは反対に1・2ノッチ入れることで動作する。[2]

主なものとして、電車電気機関車といった電気車では、モーター発電機として使用し、発生した電力を車載の抵抗器熱エネルギーに変換してブレーキ力を得る発電ブレーキ、同じく発生した電力を架線に戻して他車がその電力を使用したり、自車の蓄電池に蓄えることでブレーキ力を得る回生ブレーキが使用される[3]

気動車ディーゼルエンジンを動力源とする大型トラックバスでは、排気管を塞ぎ、その際に発生する圧力で回転を抑制してブレーキ力を得る排気ブレーキ流体抵抗を利用するコンバータブレーキ・流体式リターダーが装備されている。

Osaka Metro 400系の運転台。ワンハンドルマスコンとなり、抑速ブレーキはボタンでの始動となっている

1990年代までの抑速ブレーキは、多くがワンハンドルマスコンでは使用できなかった。近畿日本鉄道南海電気鉄道でワンハンドルマスコンを採用しないケースが多いのは、抑速ブレーキが一部車両に搭載されており、部品を統一した方が安上がりになるのが理由である。技術の進歩により、前述した大阪市交通局30系の後継車両である、Osaka Metro 400系の他、JRではE233系電車313系電車など、ワンハンドルで抑速ブレーキを採用した車両も徐々に登場している。

脚注

  1. ^ レイルロード『大阪市交通局30系 Vol.2』,文苑堂,2016年7月
  2. ^ 一部、ブレーキハンドルで抑速ブレーキをかける車両も存在する
  3. ^ リニアモーター使用の場合も、同様に電気ブレーキが使用される。例えば愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)100形は、60‰超の勾配が随所に存在するため、抑速ブレーキが使用される。