環境正義
環境正義(かんきょうせいぎ、英語: environmental justice)とは、人種や国籍、所得などにかかわらず、すべての人々が公正に扱われ、安全で健康的な環境で暮らせるようにと主張する社会運動である[1]。この運動は、貧困層や少数派などの弱者が、有害廃棄物や資源採掘などの土地利用による環境被害を受けやすいという「環境レイシズム」に対抗する形で、1980年代のアメリカで始まった[要出典]。現在では、世界各地で多国籍企業や政府と対立する環境紛争において、環境正義の主張が展開されている[要出典]。
概要
環境正義とは、環境問題と社会的な正義が結びついた概念である[要出典]。環境正義は、以下のような要素を含んでいる[要出典]。
- 配分的正義:環境リスクや利益を公平に分配すること
- 手続き的正義:意思決定のプロセスに平等に参加すること
- 承認的正義:抑圧や差別を認めて是正すること
- 能力的正義:社会的な資源を活用して共同体を発展させること
環境正義運動は、1982年にアメリカのノースカロライナ州で発生したウォーレン郡の抗議行動がきっかけとなって始まった[要出典]。この事件では、PCB(ポリ塩化ビフェニル)で汚染された土壌を主に黒人が住むウォーレン郡の埋立地に運ぶ計画に対して、住民や公民権運動の活動家が反対し、逮捕者を出すほどの激しい抗議行動が行われた[要出典]。この事件は、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)による「不公平な負担」(Unfair Burden)という報告書の作成や、アメリカ合衆国エネルギー省による環境正義局の設置など、環境正義に関する政策や研究の契機となった[要出典]。
環境正義運動は、当初はアメリカの国内問題として扱われていたが、やがて国際的な問題として認識されるようになった[要出典]。例えば、バーゼル条約やロッテルダム条約などの国際的な廃棄物管理の枠組みが整備される一方で、電子廃棄物やプラスチックごみなどの有害廃棄物が先進国から途上国に輸出され、現地の人々の健康や環境に悪影響を及ぼすという問題が起きている[要出典]。また、気候変動や生物多様性の喪失などの地球規模の環境問題においても、その原因や影響に関して不公平な分担が存在するという問題が指摘されている[要出典]。
環境正義運動は、先住民や土着民の権利や知恵を尊重し、彼らと連帯することも重要な課題としている[要出典]。先住民や土着民は、しばしば自然資源の開発や保護のために強制移住させられたり、伝統的な生活様式や文化を奪われたりする被害を受けている[要出典]。しかし、彼らは自然と調和した持続可能な暮らしを実践しており、環境保護に貢献しているとも言える[要出典]。そのため、彼らの声を聞き入れ、彼らの知恵を活用することが、環境正義の実現に必要である[要出典]。
関連項目
脚注
- ^ “Environmental Justice”. US EPA. 2021年12月16日閲覧。