羅城門の鬼

鳥山石燕今昔百鬼拾遺』より「羅城門鬼」

羅生門の鬼(らしょうもんのおに、羅生門の鬼)は、平安京の正門・羅城門に巣食っていたといわれる室町時代謡曲『羅生門』などに登場する[1]

概要

源頼光酒呑童子を討伐した後、自分の屋敷で頼光四天王平井保昌とともに宴を催していたところ、平井(または四天王の1人・卜部季武)が、羅城門に鬼がいると言い出した。四天王の1人・渡辺綱は、王地の総門に鬼が住む謂れはないと言い、確かめるために鎧兜と先祖伝来の太刀で武装して馬に乗り、従者も従えずに1人で羅城門へ向かった[1][2]

九条通に出て羅城門が正面に見えてきた頃、急に激しい風に見舞われ、馬が動かなくなった。綱が馬から降りて羅城門へ向かうと、背後から現れた鬼に兜をつかまれた。すかさず綱が太刀で斬りつけたが、逆に兜を奪われた。綱の太刀と鬼の鉄杖が激しくぶつかり合った末、綱はついに鬼の片腕を斬り落とした。鬼は「時節を待ちて、取り返すべし」と叫んで、空を覆う黒雲の彼方へ消えて行ったという[2]

平家物語』剣の巻にある一条戻橋の鬼の話では、綱が鬼の腕を斬り落とす場面の舞台は一条戻橋であり、この後に鬼が綱の乳母に化けて腕を奪い去るとある。謡曲『羅生門』は『平家物語』で綱と鬼との戦いまでの話をもとに、舞台を一条戻橋から羅城門に変えて創作されたものとされ、その後の鬼の報復の話は謡曲では『羅生門』とは別作品の『茨木』になっている。このことから、別々の鬼である羅城門の鬼と茨木童子がしばしば同一視される[1][3]

脚注

  1. ^ a b c 村上健司編著 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、363-364頁。ISBN 978-4-620-31428-0
  2. ^ a b 笹間良彦 『絵で見て不思議! 鬼ともののけの文化史』 遊子館、2005年、28-29頁。ISBN 978-4-946525-76-6
  3. ^ 吉成勇編 『歴史読本特別増刊・事典シリーズ〈第16号〉日本「神話・伝説」総覧』 新人物往来社、1992年、157頁。