2014年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)のポストシーズンは9月30日に開幕した。アメリカンリーグの第45回リーグチャンピオンシップシリーズ(英語: 45th American League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、10月10日から15日にかけて計4試合が開催された。その結果、カンザスシティ・ロイヤルズ(中地区)がボルチモア・オリオールズ(東地区)を4勝0敗で下し、29年ぶり3回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出を果たした。
両球団がポストシーズンで対戦するのはこれが初めて。今シリーズは、ポストシーズン史上初めて両球団の全先発投手が6イニング未満で降板する展開となったうえに、全試合が2点差以内で決着する接戦続きだったが、救援投手陣と守備で上回ったロイヤルズが初戦から負けなしの "スウィープ" でオリオールズを退けた[3]。ロイヤルズの抑え投手グレッグ・ホランドは、1シリーズ中にチームの4勝全てでセーブを挙げた史上3人目の投手となった[注 1][4]。シリーズMVPには、第2戦で4安打を放ち2得点を記録するなど、4試合で打率.533・1打点・5得点・OPS 1.255という成績を残したロイヤルズのロレンゾ・ケインが選出された。しかしロイヤルズは、ワールドシリーズではナショナルリーグ王者サンフランシスコ・ジャイアンツに3勝4敗で敗れ、29年ぶり2度目の優勝を逃した。
両チームの2014年
オリオールズの先発投手・
陳偉殷(左。写真は2012年5月15日撮影)と、ロイヤルズの外野手
アレックス・ゴードン(写真は2011年5月24日撮影)
10月5日、まず先に行われた試合でオリオールズ(東地区優勝)が、そのあとの試合ではロイヤルズ(中地区2位=第1ワイルドカード)が、それぞれ地区シリーズ突破を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
オリオールズは2013年、85勝77敗の地区3位で2年連続のポストシーズン進出には6.0ゲーム差届かず。2014年へ向けて、手薄だった先発ローテーションにはウバルド・ヒメネスを、指名打者にはネルソン・クルーズを加えた[5]。この年は5月終了時点で27勝27敗の勝率.500だったが[6]、そこから勝ち越しを伸ばしていき、7月4日以降は地区単独首位の座を維持しながらシーズンを進める[7]。ただその過程では、主力選手に離脱が相次いだ。5月には捕手のマット・ウィータースが肘痛でシーズン絶望となり[6]、8月には三塁手マニー・マチャドが膝痛で残り試合の欠場決定、9月には一塁手クリス・デービスが治療薬使用申告漏れによって25試合の出場停止処分を受けた[8]。こうした逆境にもかかわらず、トロント・ブルージェイズやニューヨーク・ヤンキースら同地区球団との差を徐々に広げていき、9月16日に17年ぶりの地区優勝を果たした[9]。平均得点4.35はリーグ6位、防御率3.44はリーグ3位。打線は出塁率がリーグ11位と低かったため本塁打数がリーグ最多の割には得点を伸ばせず、チームの強みは打力よりも守備防御点リーグトップの守備力にあった[7]。投手陣では新戦力のヒメネスがシーズン途中でローテーションから外されるなど期待外れに終わった一方で[10]、クリス・ティルマンが新たにエースとして台頭した[6]。地区シリーズではデトロイト・タイガースを3勝0敗で下した[11]。
ロイヤルズは直近2年連続で地区3位ながら、勝敗を2012年の72勝90敗から2013年は86勝76敗に向上させた。アレックス・ゴードンやグレッグ・ホランドら生え抜きが消化試合ではないシーズン終盤の戦いを初めて経験し、エースのジェームズ・シールズも契約が残り1年となったことから、2014年は勝負の年に位置づけられた[12]。この年は前半戦を地区首位タイガースと6.5ゲーム差の2位で終え、8月上旬には8連勝で首位に立つ[13]。その後はタイガースと地区優勝を、ともに西地区のオークランド・アスレチックスやシアトル・マリナーズらとワイルドカードを争った。地区2位で迎えた9月26日にはポストシーズン進出を決め、当時の北米4大プロスポーツリーグで最長となる28年連続ポストシーズン逸に終止符を打った[14]。ただ、残り2試合で逆転地区優勝を目指したが、タイガースに1.0ゲーム差及ばず第1ワイルドカードにまわった[15]。平均得点4.02はリーグ9位、防御率3.51はリーグ4位。リーグ最多の153盗塁を記録するなど足を使った攻撃、左中間のゴードンとロレンゾ・ケインを中心とした堅い守備、終盤3イニングの継投を盤石にしたホランドら救援投手陣、といったスモールボールがチームの強みとなった[13]。ポストシーズンでは、ワイルドカードゲームでアスレチックスを相手に延長12回逆転サヨナラ勝ちすると[16]、地区シリーズでもロサンゼルス・エンゼルスに3連勝した[17]。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、地区優勝球団どうしが対戦する場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、オリオールズがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は7試合対戦し、ロイヤルズが4勝3敗と勝ち越していた[18]。
ロースター
両チームの出場選手登録(ロースター)は以下の通り。
- 名前の横の★はこの年のオールスターゲームに選出された選手を、#はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
- 年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
オリオールズは地区シリーズのロースターから投手を入れ替え、右腕ウバルド・ヒメネスに代えて左腕ブライアン・マティスを登録した。地区シリーズの対戦相手デトロイト・タイガースが右の強打者を揃えていた一方、ロイヤルズ打線の中軸にはエリック・ホズマーやアレックス・ゴードンら左打者が多く、マティスは対左打者の被打率を.223としている[19]。ヒメネスは前年シーズン終了後にFAとしてオリオールズと4年5000万ドルの契約を結んだが、1年目のこの年は25試合125.1イニングで防御率4.81と低迷し[10]、地区シリーズではロースター入りしながらも登板機会を得られなかった。これに対し、ロイヤルズは地区シリーズからのロースター変更はない[20]。
試合結果
2014年のアメリカンリーグ優勝決定戦は10月10日に開幕し、途中に移動日と雨天順延を挟んで6日間で4試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付 |
試合 |
ビジター球団(先攻) |
スコア |
ホーム球団(後攻) |
開催球場
|
10月10日(金) |
第1戦 |
カンザスシティ・ロイヤルズ |
8-6 |
ボルチモア・オリオールズ |
オリオール・パーク・ アット・カムデン・ヤーズ |
|
10月11日(土) |
第2戦 |
カンザスシティ・ロイヤルズ |
6-4 |
ボルチモア・オリオールズ
|
10月12日(日) |
|
移動日 |
|
10月13日(月) |
第3戦 |
雨天順延 |
カウフマン・スタジアム
|
10月14日(火) |
第3戦 |
ボルチモア・オリオールズ |
1-2 |
カンザスシティ・ロイヤルズ
|
10月15日(水) |
第4戦 |
ボルチモア・オリオールズ |
1-2 |
カンザスシティ・ロイヤルズ
|
優勝:カンザスシティ・ロイヤルズ(4勝0敗 / 29年ぶり3度目)
|
第1戦 10月10日
第2戦 10月11日
第3戦 10月14日
第4戦 10月15日
脚注
注釈
出典
- ^ Matt Snyder, "LCS umpires named; Joe West, Gerry Davis crew chiefs," CBSSports.com, October 9, 2014. 2021年7月31日閲覧。
- ^ 城ノ井道人 「リーグ優勝決定シリーズ ロイヤルズVSオリオールズ 全4試合2点差以内の接戦をロイヤルズが鉄壁の守りで勝ち抜く」 『月刊スラッガー』2015年1月号、日本スポーツ企画出版社、2014年、雑誌15509-1、56-57頁。
- ^ George A. King III, "Is this Royals bullpen the most dominant in decades?," New York Post, October 16, 2014. 2021年7月31日閲覧。
- ^ Ben Nicholson-Smith, "Orioles primed for contention with Cruz, Ubaldo," Sportsnet.ca, February 24, 2014. 2023年6月24日閲覧。
- ^ a b c Alec Morrison, "Chris Tillman emerges as needed, and unlikely, ace for Orioles," Sports Illustrated, October 2, 2014. 2023年6月24日閲覧。
- ^ a b 宇根夏樹 「30球団通信簿 全選手最終成績+GM通信簿 ボルティモア・オリオールズ 17年ぶり地区Vの要因は一発攻勢より堅守と投手陣」 『月刊スラッガー』2014年12月号、日本スポーツ企画出版社、2014年、雑誌15509-12、49頁。
- ^ Brittany Ghiroli, "Davis suspended 25 games for amphetamines / Penalty will carry into postseason should AL East-leading Orioles continue on," MLB.com, September 12, 2014. 2023年6月24日閲覧。
- ^ Dan Connolly, "Orioles use power, good pitching to beat Blue Jays for AL East title," Baltimore Sun, September 16, 2014. 2023年6月24日閲覧。
- ^ a b Eduardo A. Encina, "Orioles right-hander Ubaldo Jimenez optimistic for rebound year in 2015," Baltimore Sun, January 31, 2015. 2023年6月24日閲覧。
- ^ Reuters Staff, "Orioles complete division sweep of Tigers," Reuters, October 6, 2014. 2023年6月24日閲覧。
- ^ foxsports, "2014 Royals preview: Solid core, strong arms make KC a contender," FOX Sports, March 13, 2014. 2023年6月24日閲覧。
- ^ a b 城ノ井道人 「30球団通信簿 全選手最終成績+GM通信簿 カンザスシティ・ロイヤルズ 8年にわたるGMの苦労がやっと実を結んだシーズン」 『月刊スラッガー』2014年12月号、日本スポーツ企画出版社、2014年、雑誌15509-12、57頁。
- ^ Tim Rohan, "Royals Clinch First Postseason Berth Since 1985," The New York Times, September 26, 2014. 2023年6月24日閲覧。
- ^ Andy McCullough, "Royals miss out on division crown, but win season finale, 6-4, over White Sox," The Kansas City Star, September 28, 2014. 2023年6月24日閲覧。
- ^ Dave Skretta, "Royals beat A's 9-8 in 12 in AL wild-card thriller," AP News, October 1, 2014. 2023年6月24日閲覧。
- ^ Dave Skretta, "Royals beat Angels 8-3 to finish off ALDS sweep," AP News, October 6, 2014. 2023年6月24日閲覧。
- ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2021年7月31日閲覧。
- ^ Eduardo A. Encina, "Orioles add lefty Brian Matusz to ALCS roster, leave off right-hander Ubaldo Jimenez," Baltimore Sun, October 10, 2014. 2021年9月25日閲覧。
- ^ Associated Press, "O's add Brian Matusz for ALCS," ESPN.com, Oct 11, 2014. 2021年9月25日閲覧。
外部リンク
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球団 | |
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- ノーフォーク・タイズ(AAA級)
- ボウイ・ベイソックス(AA級)
- アバディーン・アイアンバーズ(High-A級)
- デルマーバ・ショアバーズ(Low-A級)
- フロリダ・コンプレックスリーグ・オリオールズ(Rookie級)
- ドミニカン・サマーリーグ・オリオールズ(Rookie級)
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