40ヤード走
40ヤード走(40-yard dash)とは、アメリカンフットボールの選手が持つスピード及び加速力を40ヤード(36.58m)走ることで評価する指標の一つであり、NFLスカウティングコンバインのテスト項目である。
概要
純粋なスピードが求められるポジションであるランニングバック、ワイドレシーバー、ディフェンシブバックは、このタイムが重要視される。コーナーバックは敵のワイドレシーバーと正対した状態で走るため、バック走のタイムが重要視される[1]。
手動によるストップウォッチでの計測では0.5秒単位の誤差が出るため、現在ではレーザー光線が張られた40ヤードラインからエンドゾーンまでの純粋な通過タイムを計測する。
「40ヤード」という距離はパントキックの平均距離に基づいて決められており[2]、4.5秒(40ヤードラインからキッカーが蹴ったボールが地面に着地するまでのタイム)を切ると俊足だといわれている。
陸上の短距離種目との相違点
世界レベルの短距離走選手はスターターピストルが鳴ってからスタートするまでに最低でも0.24秒以下のリアクションタイムが求められるが(リオ五輪100メートル準決勝時の山縣亮太のリアクションタイムは0.109秒[3]、同五輪100メートル決勝時のウサイン・ボルトのリアクションタイムは0.155秒)[4]、アメリカンフットボールの40ヤード走のスタートのタイミングは選手個人に任されており、陸上のスタート時のようなリアクションタイムは求められない。
40ヤード走はNFL独自のテスト項目であり、国際陸連が定めた陸上種目の中には存在しない。特に上記の様にスタートの方法が全く異なるため、40ヤード走で好記録を収めた者が陸上の短距離種目で好記録を出せるとは限らない(逆も同様である)。
NFLでも有数の俊足であるワイドレシーバーのJacoby Fordは2010年のコンバインで4.28秒を記録しており(2016年現在で7位タイ)、クレムゾン大学での60メートル走のベストタイムは6.51秒を記録しているが、この記録は歴代の上位50人にも入っていない。[5]
2017年、100メートル走9.79秒、60メートル走6.34秒の世界記録保持者である短距離選手のクリスチャン・コールマンは、NFL最速記録の4.22秒を上回る4.12秒を記録している。[6]
2019年、100メートル走9.58秒の世界記録保持者である元短距離選手のウサイン・ボルトがスーパーボウルのイベントに参加、NFL最速記録に並ぶ4.22秒を記録している。[7][8]
40ヤード走の非公認記録
ボー・ジャクソンはオーバーン大学時代に4.12秒及び4.18秒を記録したと主張している。[9][10][11]
マイアミ・ドルフィンズのJakeem Grantはテキサス工科大学時代の2016年にニューオーリンズ・セインツのスカウティングコンバインで手動計測ながら4.1秒を記録している。[12]
ディオン・サンダースは1989年に4.27秒を記録している。[13]
Carlin Islesは2013年にデトロイト・ライオンズのスカウティングコンバインで4.22秒を記録している。[14]
NFLスカウティングコンバインにおける40ヤード走の公認記録一覧
電子計測が導入された1999年以降の公認記録である。[15][16]
記録 | 氏名 | 身長 | 体重 | ポジション | 大学 | ドラフト指名年 | ドラフト指名チーム及び順位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4.21 | Xavier Worthy | 6 ft 1 in (185 cm) | 172 lb (78 kg) | ワイドレシーバー | テキサス大学 | ||
4.22 | John Ross | 5 ft 11 in (180 cm) | 188 lb (85 kg) | ワイドレシーバー | ワシントン大学 | 2017年 | シンシナティ・ベンガルズ全体9番目指名 |
4.24 | Rondel Menendez | 5 ft 9 in (175 cm) | 192 lb (87 kg) | ワイドレシーバー | イースタンケンタッキー大学 | 1999年 | アトランタ・ファルコンズ全体247番目指名 |
4.24 | クリス・ジョンソン | 5 ft 11 in (180 cm) | 192 lb (87 kg) | ランニングバック | イーストカリフォルニア大学 | 2008年 | テネシー・タイタンズ全体24番目指名 |
4.26 | Jerome Mathis | 5 ft 11 in (180 cm) | 184 lb (83 kg) | ワイドレシーバー | ハンプトン大学 | 2005年 | ヒューストン・テキサンズ全体114番目指名 |
4.26 | Dri Archer | 5 ft 8 in (173 cm) | 173 lb (78 kg) | ランニングバック | ケント州立大学 | 2014年 | ピッツバーグ・スティーラーズ全体97番目指名 |
4.27 | Stanford Routt | 6 ft 2 in (188 cm) | 193 lb (88 kg) | コーナーバック | ヒューストン大学 | 2005年 | オークランド・レイダース全体38番目指名 |
4.27 | Marquise Goodwin | 5 ft 10 in (178 cm) | 181 lb (82 kg) | ワイドレシーバー | テキサス大学オースティン校 | 2013年 | バッファロー・ビルズ全体78番目指名 |
4.28 | チャンプ・ベイリー | 6 ft 0 in (183 cm) | 192 lb (87 kg) | コーナーバック | ジョージア大学 | 1999年 | ワシントン・レッドスキンズ全体7番目指名 |
4.28 | Jacoby Ford | 5 ft 9 in (175 cm) | 190 lb (86 kg) | ワイドレシーバー | クレムゾン大学 | 2010年 | オークランド・レイダース全体108番目指名 |
4.28[17] | J. J. Nelson | 5 ft 10 in (178 cm) | 156 lb (71 kg) | ワイドレシーバー | アラバマ大学バーミングハム校 | 2015年 | アリゾナ・カージナルス全体159番目指名 |
4.28 | DeMarcus Van Dyke | 6 ft 1 in (185 cm) | 187 lb (85 kg) | コーナーバック | マイアミ大学 | 2011年 | オークランド・レイダース全体81番目指名 |
4.29 | Fabian Washington | 5 ft 11 in (180 cm) | 188 lb (85 kg) | コーナーバック | ネブラスカ大学リンカーン校 | 2005年 | オークランド・レイダース全体23番目指名 |
4.29 | ドミニク・ロジャース=クロマティ | 6 ft 2 in (188 cm) | 184 lb (83 kg) | コーナーバック | テネシー州立大学 | 2008年 | アリゾナ・カージナルス全体16番目指名 |
4.29 | Josh Robinson | 5 ft 10 in (178 cm) | 199 lb (90 kg) | コーナーバック | セントラルフロリダ大学 | 2012年 | ミネソタ・バイキングス全体66番目指名 |
4.30 | Darrent Williams | 5 ft 9 in (175 cm) | 176 lb (80 kg) | コーナーバック | オクラホマ州立大学 | 2005年 | デンバー・ブロンコス全体56番目指名 |
4.30 | Tye Hill | 5 ft 10 in (178 cm) | 185 lb (84 kg) | コーナーバック | クレムゾン大学 | 2006年 | セントルイス・ラムズ全体15番目指名 |
4.30 | Yamon Figurs | 5 ft 11 in (180 cm) | 174 lb (79 kg) | ワイドレシーバー | カンザス州立大学 | 2007年 | ボルチモア・レイブンズ全体74番目指名 |
4.30 | Darrius Heyward-Bey[18] | 6 ft 2 in (188 cm) | 210 lb (95 kg) | ワイドレシーバー | メリーランド大学カレッジパーク校 | 2009年 | オークランド・レイダース全体7番目指名 |
ポジション別の平均タイム
以下の表は2008年から2012年のNFLスカウティングコンバインにおける40ヤード走の各ポジションごとの平均タイムである。[19]
ポジション | 秒数 |
---|---|
ワイドレシーバー | 4.55 |
コーナーバック | 4.55 |
ランニングバック | 4.59 |
セイフティ | 4.62 |
アウトサイドラインバッカー | 4.74 |
タイトエンド | 4.77 |
フルバック | 4.80 |
インサイドラインバッカー | 4.80 |
クォーターバック | 4.87 |
ディフェンシブバック | 4.88 |
ディフェンシブエンド | 5.13 |
センター | 5.30 |
オフェンシブタックル | 5.32 |
オフェンシブガード | 5.36 |
出典
- ^ “日本の先駆者へ「前向き」 バック走・細川修平:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2020年12月21日閲覧。
- ^ MacCambridge, Michael (2005). America's Game: The Epic Story of How Pro Football Captured a Nation (1st ed.). New York: Anchor Books. p. 29. ISBN 978-0-375-72506-7. "Intent on building a fast team, [Paul Brown in the mid-1940s] began timing players in the 40-yard dash, rather than the 100, reasoning that the 40 was a more meaningful measure of true football speed, about the distance a player would cover on a punt."
- ^ https://thepage.jp/detail/20160815-00000007-wordleafs
- ^ http://www.nytimes.com/interactive/2016/08/13/sports/olympics/can-you-beat-usain-bolt-out-of-the-blocks.html?_r=1
- ^ 60 Metres - men - senior - indoor. IAAF. Retrieved on 2013-05-29.
- ^ Watch: Tennessee's Christian Coleman clocks 4.12 for 40-yard dash in response to NFL times Sports Illustrated 2017年5月2日
- ^ “人類最速”ウサイン・ボルト氏NFL最速記録に並ぶ テレ朝news 2019年2月4日
- ^ Usain Bolt having fun at Super Bowl, ‘ties’ NFL Combine 40-yard dash record NBC 2019年2月2日
- ^ http://uproxx.com/sports/bo-jackson-40-yard-dash-time-nfl-combine
- ^ http://bleacherreport.com/articles/2519690-nfl-urban-legends-bo-jackson-and-the-too-fast-to-be-true-40-yard-dash
- ^ http://gnb.scout.com/2/732296.html
- ^ “Texas Tech's Jakeem Grant clocked at 4.10 in 40-yard dash”. SportingNews (2016年3月11日). 2016年3月12日閲覧。
- ^ Hessler, Warner (1989年4月23日). “NFL General Managers Moan About Another Diluted Draft”. Daily Press 2012年3月1日閲覧。
- ^ “Detroit Lions sign rugby player Carlin Isles to practice squad”. Daily News (New York). (2013年12月26日)
- ^ “Top Performers 2006-2011”. (2011年7月16日)
- ^ Cooney, Frank (2011年3月1日). “Officially, Van Dyke is combine’s fastest player”. USA Today
- ^ “NFL on Twitter”. Twitter (2015年2月21日). 2015年2月21日閲覧。
- ^ http://nflcombineresults.com/playerpage.php?f=Darrius&l=Heyward-Bey&i=8229
- ^ http://www.milehighreport.com/2013/2/12/3969128/some-clarification-is-in-order-average-speed-by-position