Ka-31 (航空機)
Ка-31
カモフ Ka-31(Ка-31)はソビエト海軍のために開発された軍用ヘリコプターであり、現在ではロシアとインドで早期警戒機として使用されている。NATOコードネームはヘリックスD(Helix-D)。
概要
Ka-60/62系列以外のすべてのカモフヘリコプターと同じく、Ka-31も同軸反転式メインローターを備えている。機体はカモフKa-27を基本としたものである。外見上の大きな特徴の第1は早期警戒用の大きなレーダーアンテナであり、使用中は回転しているが、それ以外の時は折りたたまれて胴体下に収納される。第2の特徴はコックピット下の大きな電子光学センサー装置の省略である。また、レーダーの邪魔にならないように降着装置は引込式になっている。
設計と開発
カモフ社(当時はカモフ設計局)は1980年に海軍用中型ヘリコプターKa-31の開発を開始し、1987年に初飛行を行った。この開発は、アントノフAn-71艦上早期警戒管制機がキャンセルされたことのへの対応であった。An-71はソ連海軍初の本格的航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」(当時は「トビリシ」の名で知られた)に配備されることを目的としていたが、ヤコブレフYak-44が採用されたためキャンセルされた。Yak-44はその後も開発が進められたが(最終的にはキャンセルされた)、ソ連海軍はそれまでの空白を埋める手段を欲し、海上での別の有効なAEWプラットフォームの研究を開始した。
艦艇からのヘリコプター運用の豊富な知識に基づき、ソ連海軍は、すでにテスト済みで信頼性のあるカモフKa-27を選んだ。カモフ設計局はそのときKa-29の開発を進めていた。ニジュニイ・ノヴゴロド電波技術研究所は、すでに同じ設計(必要な変更は加えたが)のAn-71用レーダーの設計を行っていた。それらの要素は1980年に一体化され、Ka-29RLDと名づけられた。レーダー開発に時間がかかったため、初飛行が行われたのは1987年になってからだった[2]。Ka-29RLD/-31の生産型は結局原型のKa-29とは大きく異なるものとなった[3]。
カモフ Ka-31の主な相違点は以下の通りである[4]。
- コックピットの下にあった大きな電子センサー装置の除去
- MFDが2台追加されたことによるコックピットの拡大。
- ASW能力の除去。
- クロンシュタットKabris 12チャンネルGPSの追加。
- エンジンの強化(クリモフTV3-117VMAR 2基)(Ka-27は、TV3-117BK)
- レーダーとC4ISRにパワーを供給するためのTA-8Ka APUの追加。
- 250マイル以上の有効範囲を持つ16のチャンネルディジタル通信装置。
改良
Ka-29からの主な技術的変更点は、エンジンの換装、APUおよび最も重要な副油圧システムの追加である。レーダーはニジュニイ・ノヴゴロド電波技術研究所設計のE801M ”OKO”(「目」の意)である。
また配備された実用型には、テイルコーンの中に、サンクトペテルブルク/レニングラード電子研究所が設計したフライト・インフォメーション・レコーダーが装備されていた。その後Yak-44がキャンセルされたため、指揮管制に関するKa-29RLD/Ka-31の責任は一層重大なものとなった。
Ka-31は公式にはレーダーピケット機に分類されているが、数々のアップグレードが行われた結果、AWACS級の機体にまで格上げされている[5]。
運用歴
開発と試験は1987年から本格的に始められたが、1980年代の終わりから1990年代初めにかけては政治的混乱と国防予算削減によって難航した。結局1995年になって、非常に限られた数のKa-31がロシア海軍に納入され、アドミラル・クズネッツオフ級航空母艦とソヴレメンヌイ級駆逐艦に配備された。
インド海軍は1999年に4台、2001年に5台、Ka-31のレーダーを発注した。ヘリコプターの全面的生産は2002年に始まった。4機からなる最初のバッチは2003年4月にインド海軍に就役し、第2のバッチは2005年に納入された。
インド海軍は空母を保有しているが、Ka-31は空母や駆逐艦からだけでなく、陸上の海軍航空基地からも運用されている。インド海軍によるこの運用は、Ka-31の大きな欠陥、すなわち本機の運用にあたって求められる主たる要素である「行動範囲」の狭さを明らかにした。そのため、ヒンドスタン航空機はヘリコプターからヘリコプターへの燃料補給システムの試験を命じられ、おそらく改造を行ったものと思われる[要出典]。またインド海軍では、Ka-31は12チャンネルレシーバーに対応し、ディファレンシャルGPSを参照するオプションを持ったAbris GPSシステムを装備している。これはクロンシュタットが自ら設計したものである[6]。
後のバッチに属する機体は、ディジタル地形マップ、地面近接警告、障害接近警告、事前プログラム経路自動ナビゲーション、フライト・スタビライゼーション、母艦(基地)への自動帰還・着地機能、それに機体の戦術的状況に関する情報を特徴としていた。
2008年、中国は人民解放軍海軍の空母に装備するため、9機のKa-31を発注した[1]。その後、中国はKa-31を東部の海軍基地を拠点に運用していると報告されている[7]。
2008年、ロシアはミストラル級強襲揚陸艦に装備するためKa-31Rを2機(オプションとしてさらに1機)を発注し、2012年に引き渡された。
また、ロシアはKa-31Rの陸上用であるKa-35を開発した。この機種は地上目標の探知と追跡のために最適化されている。2004年に最初のプロトタイプが飛行し、2006年には2機目が製造された。Ka-35は2015年に正式に就役を認められ、2016年にシリアで使用された。今のところこのバージョンの量産発注はされていない[1]。
使用者
- ソビエト連邦 - ソ連海軍 (Ka-29RLD(試作型))
- インド - インド海軍 – Ka-31 14 機。
- ロシア - ロシア海軍 - 2 機の Ka-31R。
- 中国 - 中国海軍 - 9 機の Ka-31。
- ロシア - ロシア陸軍 – 2 機の Ka-35 試作機。
要目(Ka-31)
- 乗員: 2 (パイロット + NSO)
- 全長: 12.5 m
- 翼幅: 14.50 m ×2
- 全高: 5.6 m
- 最大離陸重量: 12,200 kg
- エンジン: イソトフ TV3-117VMAR ターボシャフトエンジン(1,633 Kw) ×2
- 最高速度: 250 km/h
- 巡航速度: 205 km/h
- 航続距離: 324 海里
- 上昇限度: 3,500 m
脚注
- ^ a b c “[Actu Le Kamov Ka-31(R)]”. Red Samovar (2020年3月21日). 2022年9月24日閲覧。
- ^ Jane's All the World's Aircraft, 1999-2000 - Page 372,by Paul Jackson ,1999
- ^ http://www.aeronautics.ru/archive/vvs/ka29-01.htm
- ^ http://www.airforce-technology.com/projects/ka31/
- ^ http://www.aeronautics.ru/archive/vvs/ka31-01.htm
- ^ http://www.bharat-rakshak.com/NAVY/Ka-31.html
- ^ “Ka-31 in Chinese PLA Navy”. 2013年5月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月12日閲覧。
関連項目
- 同系列
- カモフ Ka-27
- カモフ Ka-29
- 同等機d
- アグスタウェストランド AW101 AEW
- ウェストランド シーキング AEW
- E-2 ホークアイ (固定翼艦載AEW機)