庭園

足立美術館の白砂青松庭
薮内流庭園。鞍馬石、鴨川石、生駒峠石などを使用。五重石塔、灯籠、園池などが配置される(旧来住家住宅)。

庭園ていえんは、見て、歩いて楽しむために、樹木を植えたり、噴水花壇を作ったりするなどして、人工的に整備された施設。日本では、自然を模して築山などが作られ、木や草が植えられているものもある。

概要

集会、交流、留置、作業などを目的とした庭ではなく、観賞、道道、思索などを目的とするとされる。また一部には、特定の世界観や宗教観を投影したものもある。庭園は自然にできることはなく、形、石の配置、樹木の選択と組合せ、通路の作り方、建物の見せかたなどすべて計画し、デザインされている。

つくる目的や方法は、時代や民族、宗教などによって異なり、さまざまな様式を生み出した。しかし、いずれも人々が理想とする環境を映し出そうとする点では共通している。楽園浄土、パラダイスなどの現世的空間が庭園なのである。庭園は、作られたときには私的なものがほとんどだが、近代になって多くが、市民が楽しめる公的・公園的なあつかいをされるようにもなっていく。なお、皇室が所有するものは、御苑(ぎょえん)と称される。

欧米の garden は人工美を追求し、花壇や池などの幾何学的デザインを誇り、自然は征服すべきという考え方を象徴し、日本の庭園は自然美を生かし、岩や木や池なども自然を模し、自然の縮図を目指し、人間が自然と一体であるという考え方を象徴する[1][2]

形式

  • サラセン式庭園 - サラセン式庭園とは、外側に厚い壁を持った「パティオ」と呼ばれる中庭を発達させた庭園。パティオは中庭であるため、周囲を建物で取り囲まれた小空間であるが、その中央に池や噴水、カナール(流れ、水溝)を配し、さらに色彩の豊かな色タイルの床、美しい花壇などが特徴である。中央に噴水や池が設けられることで、鉢植えなどにして置かれた樹々とともに、場所に清涼感を与えている。中世初期にイスラム教徒であるアラビア人系のサラセン人が征服した地域は、西は北アフリカ沿岸からイベリア半島まで、東は中央アジアからインドまでに至るが、サラセン人はそれぞれの地でその地の文化を取り入れ、次の特徴ある庭園様式を形成している。サラセン式の特徴は,すべてパティオと呼ばれる中庭式の庭園であり、雨量が少なく乾燥し熱い日ざしの気候と外敵を防ぐことが理由となって発達した。以下の形式がある。
    • ペルシャ・サラセン式庭園 - 長方形の中庭を、二本の直交する園路で四分し、園路に沿ってカナール設け、その交点に浅いプールや園亭などが置かれる形。アジアの庭園#ペルシャ王室庭園が代表作で、これが初期のスタイルで、後で生まれるスペイン・サラセン式庭園やインド・サラセン式庭園はこれが源泉となっている。
    • スペイン・サラセン式庭園 - その代表的なものはスペイン・グラナダに現存するアルハンブラ宮殿のアルベルカ、アラヤネスの中庭、フェネラリフェ庭園、セビリアのアルカサル庭園、など優れた庭園がある。これは7世紀末スペインを征服した時につくられた形式で、スペインに侵入したサラセン人は、パティオの周囲は壁や柱廊で囲む。壁や柱、床には色タイルで独特の模様が描かれている。現在もスペイン文化圏ではこの庭園様式での庭園が作られている。
    • インド・サラセン式庭園 - 10世紀インドに侵入したサラセン人が従来のインド文化と融合してつくった様式の庭園。庭園を直交するカナールで四分し、その交点に四角形の檀を作り、その上に大理石の噴水池を設けている。アジアの庭園#インド庭園ムガル王朝の庭園でのタージ・マハールがこの種の代表的庭園である。これも他のサラセン式のものをそのままの形で再現しているのではなく、スペインで確立したパティオとペルシャの水盤・水工・植栽技巧などをインドの風土に合わせ改変して拡大し、許容して継承している。
龍安寺の方丈石庭
後楽園の池泉回遊式庭園

宗教別

種類別

庭園の要素

代表的なものを以下に示す。

パラスディアン橋とパンテオン。ストウヘッドの庭にて
フォリー。ブローズワースホールの庭にて
ガーデン・オーナメント:パーム・ハウスの古典的な骨董花瓶、北アイルランドのベルファスト植物園

庭の飾り・ガーデンオーナメントは、庭、風景、そして公園の景の強化と装飾のために使用される要素である。これには以下のとおり

  • コラム() - キャストストーン(鋳造での石)
  • 水景物
  • ウォーターガーデン
  • 願い井戸 (Wishing well
  • ガーデン家具 (Garden_furniture - モチーフタイプ
  • 景観照明  (Landscape_lighting - 装飾備品
  • フラワーボックス (Flower box
  • ウィンドウボックス (Window box
  • Lawn_ornament
    • バードパス (Bird bath:鳥が水浴びしたり飲んだりできるように水を溜めておくための構造物で、一般に台座の上に支えられているものをバードバスと呼んでいる。
    • 鳥のえさ箱 (Bird feeder:鳥の種などの餌を入れる容器で、ミニチュアハウスや納屋のようなデザインのものが多く、杭や柱に取り付けられることがある。
    • 巣箱、鳥小屋/バードハウス : 通常は木で作られ、杭に取り付けられた鳥のための小さな家。
    • フライング・ケージ (Aviary
    • 凝視球 ヤードグローブ  (Yard_globe : 直径12インチ以上の光を反射する球体で、一般に支持構造物の上に飾られる。注視球とも呼ばれる。
    • 風車 : 断絶しているが自由に回転する小型のもので、典型的には約12枚の金属羽根を持つアメリカのアーモーター式、または4枚の木製の羽根を持つ伝統的なオランダ式である。
    • サンキャッチャー
    • 彫刻/屋外彫刻
    • 彫像
      • ヒューマンフォーム(Human form): 人間の姿を描いたもの。人型の庭園装飾品には、一般に地面に突き刺して垂直に支える二次元のものと、三次元のものがある。人型の例としては、コンクリート製のアボリジニ、芝生ジョッキー、グルームズマンなどがある。二次元の人型芝生装飾品の例としては、アーミッシュやペンシルバニアダッチなどの人々を表現したものがある。ペンシルバニアダッチの人型のバリエーションとして、年配の女性がガーデニングのために前かがみになり、下着が見えるように描かれているものがある。
        • バスタブマドンナ(人工洞窟)  (Bathtub_Madonna: イエスの母マリアの像を浴槽に入れ、半分地中に埋めたもの。マリア像は白いコンクリート製であることが多いが、青い衣服で彩色されることもある。
        • 芝生の騎手 ローン・ジョッキー(ジョッコ、グルームズマン):奴隷服を着た黒馬の従者の像で、しばしばジョッコとも呼ばれ、小柄なものが多い。グルームズマンはしばしばヒッチポストとして使用された。グルームズマンの起源については諸説あるが、アメリカ南部が起源であることがしられている。市民権運動以降、それほど一般的ではなくなった。キャバリアのバリエーションでは、一般的に白人の姿が描かれている。一説には、最初のグルームスマンはジョージ・ワシントンの依頼で作られたと言われている。
        • コンクリート・アボリジナル (Concrete Aboriginal:オーストラリアでかつてよく見られた芝生の置物である。
        • アッシジのフランチェスコ像:自然や動物によく関連する聖人を石膏やセメントで鋳造することがある。
        • ガーデン・ノーム: 小型で一般的にカラフルなノームの彫像である。
      • 動物のオブジェ:カエル、カメ、ウサギ、シカ、フラミンゴ、アヒルなどの動物像をプラスチックやセメントで鋳造したものです。
        • コンクリートのガチョウ  (Concrete_goose:アメリカで人気のある芝生の置物である。
        • プラスチックピンクフラミンゴ  (Plastic_flamingo:ピンク色のフラミンゴを等身大で再現したもの。プラスチック製フラミンゴの起源は、1946年にユニオン・プロダクツ社の「Plastics for the Lawn」製品群にあるとする説がある。そのコレクションには、犬、アヒル、カエル、そしてフラミンゴがあった。
    • トピアリー/標本
    • ファウンド・オブジェクト・アート (Found object:ボーリングボール (bowling ballsトイレのプランター、アンティークの農機具などのアイテムは、芝生の置物として再利用されることがある。
    • Jigglers:プラスチック製または金属製の花や鳥、昆虫をバネ付きの杭に取り付け、風が吹くとジリジリと動くようにしたもの。
    • スピナー(Spinners): 花びらが風に乗って回転する花のような形が多い。羽を回転させる鳥や昆虫などのバリエーションもある。
    • 灯台: 地元の灯台を小規模に表現したものは、沿岸部で人気がある。
  • 月橋  (Moon_bridge- 小規模の装飾品
  • ジグザグ橋
  • パゴダ - 小さなバージョン
  • 台座 - 例えばテラコッタ、キャストストーン
  • ポット
  • ハンギング・バスケット  (Hanging basket
  • 日時計
  • アイキャッチャー  (Eyecatchers
  • ウィンドチャイム/風鈴エオリアン・ハープ
  • 風向計/風見鶏
  • 鎖樋
  • ししおどし
  • 水琴窟
  • ブロデリー  (Belvedere (structure)
  • 庭園鉄道
  • 蓬萊/蓬萊山
  • モノプテロス  (Monopteros
  • 月の門  (Moon gate
  • ニンファエウム
  • パルテール  (Parterre
  • パビリオン
  • 屋外暖炉  (Outdoor fireplace
  • 切り株
  • ガーデンルーム (Garden room

ギャラリー

材料

技法

書物

日本の名園

世界の名園

拙政園
アルハンブラ宮殿の庭園
タージ・マハルの庭園
ブッチャート・ガーデンズ
スペイン、コルドバのアンダルシア風パティオ
Inhotim 、Brumadinho、ブラジル

関連書籍

  • 『古代庭園の思想―神仙世界への憧憬』金子裕之編 角川選書 角川書店 ISBN 4047033391

参考文献

  1. ^ 「garden」の項目『新英和大辞典』第6版 研究社
  2. ^ 日本庭園と西洋庭園の比較から見る自然に対する価値感の違い
  3. ^ Albardonedo Freire, Antonio (2002), El Urbanismo de Sevilla durante el reinado de Felipe II. Sevilla, Guadalquivir Ediciones, ISBN 84-8093-115-9, pp. 191-208.

関連項目

音楽

外部リンク