コンビニ人間
コンビニ人間 | ||
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著者 | 村田沙耶香 | |
イラスト | 金氏徹平(装画) | |
発行日 | 2016年7月27日 | |
ジャンル | 小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 四六判 上製 上製カバー装 | |
ページ数 | 160 | |
公式サイト | books.bunshun.jp | |
コード |
ISBN 978-4-16-390618-8 ISBN 978-4-16-791130-0(文庫版) | |
ウィキポータル 文学 | ||
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『コンビニ人間』(コンビニにんげん)は、村田沙耶香による日本の小説作品。『文學界』2016年6月号に掲載、文藝春秋より2016年7月27日に刊行された。第155回(2016年)芥川龍之介賞受賞作[1]。また、2018年9月4日には文庫版が刊行された。
担当編集者は又吉直樹『火花』と同じ浅井茉莉子。装画は現代美術家・金氏徹平の作品『Tower』を使用している。
NHK-FM「FMシアター」にて2019年にラジオドラマ化された。
36歳未婚、彼氏なしでコンビニエンスストアのアルバイト歴18年目の主人公の生き方を通じて「普通」とは何かを問う。
執筆背景
作者は三島由紀夫賞を筆頭とする幾つかの賞を受賞した作家でありながらコンビニエンスストアで週3回働いており、その経験を活かしたコンビニを舞台にした作品である[2][3]。受賞後の勤務継続については店長と相談すると述べている[4]。
あらすじ
主人公"古倉恵子"は、三十代半ばであるにもかかわらず、正規の就職をせずに大学時代に始めたコンビニのアルバイトを続けていた。
古倉は子供の頃から変わり者で人間関係は希薄、恋愛経験も皆無だったが、「コンビニで出会う人間の真似」をしたり、妹の助言を聞くことで、大学生になってようやく普通の人間らしく振る舞う方法を身につけた。これまで世間一般の人間の規格から外れていた彼女にとって、これは「初めて私が人間として誕生した瞬間」であった。
古倉は私生活のほとんどを「コンビニでの仕事を円滑に行うため」という基準に従って過ごしつつ、なんとか常人を演じ続けてきた。しかし自身の加齢と、それによる新たな世代の人間との干渉が増えたことにより、そのような生き方は徐々に限界に達しつつあった。
そんな時、古倉は元バイト仲間の白羽という男と再会する。白羽は、就労の動機を婚活だとうそぶき、常連の女性客にストーカーまがいの行為を働いて店を解雇された過去を持っている。
再会した白羽の半ば一方的な頼みにより、二人は奇妙な同居生活を始めることになる。周囲の者達はその状況を勝手に「同棲」と解釈し、古倉を囃し立てる。古倉は若干の戸惑いを感じるも、冷静にそんな彼らを観察し、白羽との関係を「便利なもの」と判断する。
やがて古倉は白羽の要求によりコンビニを辞めて就活を始めることになる。しかし、面接に向かう途中でたまたま立ち寄ったコンビニで、自身の経験から図らずも店の窮地を救った彼女は、コンビニ店員こそが自分の唯一の生きる道であることを強く再認識し、就職との天秤にかけていた白羽との関係を解消し、コンビニに復職することを心に誓うのであった。そしてコンビニで働くということに使命を感じるのであった。
登場人物
評価
芥川賞選考委員による評価
村上以外は全て『文藝春秋』2016年9月号の選評ページを出典とする。
山田詠美は、「コンビニという小さな世界を題材にしながら、小説の面白さの全てが詰まっている。十年以上選考委員を務めてきて、候補作を読んで笑ったのは初めてだった」と評価した。
村上龍は、「この十年、現代をここまで描いた受賞作は無い」と評価した[5]。
島田雅彦だけが、「テーマやコンセプトやタイトルやキャラだけで成立していて、言葉のオーラも心理描写も無い。風俗小説としてのリアリティはあるが、同業者(他の作家たち)によって乗り越えられるべき、能天気なディストピア像である」と、選者中で唯一ネガティブな評価をした。
高樹のぶ子は、崔実の『ジニのパズル』のみを強く推す一文を選評に載せ、本作を含む他作品に全く言及しなかった。
残りの選考委員たちは、ほぼ本作に肯定的であった。
芥川賞選考委員以外の評価
作家で比較文学者の小谷野敦は、本作のように面白い作品が芥川賞を受賞することは稀であり、同賞の歴代受賞作品でもトップクラスの面白さだと評した[6]。
反響
単行本の売上
本書は2016年7月末に単行本として刊行直後より芥川賞受賞作の中で又吉直樹『火花』に次ぐ爆発的な売れ行きを示し[7]、8月上旬に5刷30万部[8]、11月中旬に10刷50万部を突破した[9]。その後世界各国にて翻訳され、2020年9月時点で全世界累計発行部数は100万部を突破している[10]。
翻訳
2017年秋に独立系出版社のGlobe Atlanticが英語での版権を獲得し[11]、竹森ジニー(Ginny Tapley Takemori)の英訳により2018年にアメリカとイギリスで出版された[2] ほか、約30の言語に翻訳されている[12]。英語訳の“Convenience Store Woman”は、米国ニューヨーカー誌のベストブックス2018の1冊に選ばれた[12]。
書誌情報
- 単行本
- 村田沙耶香 『コンビニ人間』 文藝春秋、2016年7月27日発売[13]、ISBN 978-4-16-390618-8
- 文庫版
- 村田沙耶香 『コンビニ人間』 文春文庫、2018年9月4日発売[14]、ISBN 978-4-16-791130-0
ラジオドラマ
NHK-FM放送「FMシアター」にてラジオドラマ化され、2019年11月30日の22時から22時50分に放送された[15]。
キャスト
スタッフ
脚注
出典
- ^ 雨野裾 (2018年7月21日). “36歳未婚・処女。普通ってなんだろう? 芥川賞受賞作『コンビニ人間』”. ダ・ヴィンチニュース (KADOKAWA) 2020年3月5日閲覧。
- ^ a b 村田沙耶香 (2019年8月3日). “古倉さんと一緒に たくさんの奇跡をくれた小説”. 週刊読書人ウェブ (読書人) 2020年3月5日閲覧。
- ^ 村田沙耶香(インタビュアー:鈴木哲也)「『コンビニ人間』にみる普通と狂気の境界 芥川賞受賞、村田沙耶香さんに聞く」『日経ビジネス電子版』、日経BP社、2016年9月15日 。2020年3月5日閲覧。
- ^ 『文藝春秋』2016年9月号掲載の受賞インタビューによる。
- ^ 『文藝春秋』2016年9月特別号最終ページ・編集だより
- ^ 小谷野敦の本書レビュー - Amazon.co.jp
- ^ “36歳未婚・彼氏いたことなし。コンビニのバイトは18年目……芥川賞受賞作『コンビニ人間』が『火花』に次ぐ記録達成!”. ダ・ヴィンチニュース (KADOKAWA). (2016年8月2日) 2020年3月5日閲覧。
- ^ “芥川賞「コンビニ人間」効果 文芸春秋が発売前に増刷”. 産経新聞. (2016年8月9日) 2016年8月19日閲覧。
- ^ “「コンビニ人間」が50万部 「アメトーーク!」で推薦”. 産経ニュース (2016年11月14日). 2021年6月18日閲覧。
- ^ “「パチンコ」×「コンビニ人間」日米100万部作家対談|ミン・ジン・リー×村田沙耶香”. 文藝春秋digital. (2020年9月19日) 2021年4月23日閲覧。
- ^ 英語圏ではわかりにくい『コンビニ人間』の日本的背景 ニューズウィーク、2018年07月19日
- ^ a b 村田沙耶香の小説『コンビニ人間』が、米雑誌『ザ・ニューヨーカー』が選ぶ「The Best Books of 2018」に選出! GQ. 2018年12月18日
- ^ “コンビニ人間(単行本)”. 文藝春秋. 2021年4月23日閲覧。
- ^ “コンビニ人間(文庫版)”. 文藝春秋. 2021年4月23日閲覧。
- ^ “NHK オーディオドラマ過去作品アーカイブ / FMシアター「コンビニ人間」(2019年11月30日 放送)”. NHK 日本放送協会. 2022年10月9日閲覧。
- ^ “FMシアター『コンビニ人間』 出演者の栗山千明さんからメッセージをいただきました!”. NHKドラマ. スタッフブログ. 日本放送協会 (2019年11月19日). 2020年3月5日閲覧。
関連項目
外部リンク
- 作品紹介(文藝春秋)
- 文春文庫『コンビニ人間』村田沙耶香 文庫 - 文藝春秋BOOKS
- コンビニ人間 - NHK オーディオドラマ